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ホットな話題コーナー

 

女性活躍推進法を業績向上の機会に

2016年3月5日

株式会社 みのり経営研究所
 代表取締役 秋山 健一郎

 

今年1月に労政カレッジで「女性活躍推進の具体的進め方」と題して3時間ほどの講演を行いました。多くの方に興味をお持ちいただき、女性活躍に向けての機運が盛り上がっているのを感じました。内容は女性活躍推進を進めて行くうえでの対応のレベルを3段階に分けての説明でした。弊社で実際にやっている意識変革の研修など含めて、参加者の多くは様々なヒントを得られたようでした。

 

席上「4月から施行される女性活躍推進法の効果」に関して質問がありました。質問された方は「形だけで終わってしまって、実質的な効果はないのではないか」という危惧を持たれてのご質問でした。私は今回の推進法による報告義務が、女性活躍の必要性への気づきの契機となり、長期的には多様な人材が活躍する下地作りにつながって行くのではないかと、楽観的な観測を述べさせて頂きました。

 

私の講演は女性活躍だけでなく、多様な人材が活躍できる組織こそが長期的には発展成長する。従ってこのような機会に社内の多様性活躍の状況を調べ、活躍の下地を作る方向に動き出すべきだという趣旨でした。そのためには、様々な施策をバラバラと羅列してランダムに進めるのではなく、現在の状況を踏まえ社員の意識のレベル、制度のレベル、長期的な風土のレベルの3段階の捉え方をすべきで、それぞれのレベルで現状調査診断から対応策を考えると効果的だとお話ししました。その3段階を下図に示します。

 

多様な人材の活躍を推進する下地作りの3レベル

 


 

女性活躍あるいは多様な社員の活躍に直接インパクトを与えるのはレベル1の個人の気付き、すなわち社員の意識、特に管理職の意識のレベルです。「多様な力が会社の業績向上の源だ」と社員が理解していれば、力のある社員のやる気が殺がれることはありません。しかし多くの場合従来のやり方と違うやり方での仕事の進め方、あるいはコミュニケーション・スタイルの違いに否定的で、その先にある業績向上の芽を摘んでしまうことが多いのです。例としていくつか紹介しましたが、その一つに、「質問をよくする人への反応」があります。女性に多いスタイルですが、新しい案件を頼まれたとき、より良くやるために色々質問します。従来の男性中心のやり方が定着している日本的な組織では、「頼まれたら黙って即取り組む」ことを良しとして来ましたから、いちいち質問をする人に対して否定的な見方をしてしまいます。しかし逆の見方をすれば、本当に理解してその案件に取り組んでいるかどうか不安です。間違った方向に進んでいて、ある段階で軌道修正するとしたら大きなロスとなります。また取り組む前に様々な可能性を検討することは、新たなやり方を発見する機会となるかも知れません。多様な力を活用し業績改善につなげるとは、このようなやり方の違いを受け入れることが出発点となります。

 

レベル2は社員の意識を支える会社の様々な制度を指します。制度が、多様な社員の活躍を後押しするようにできていなければ、社員の意識は変わりようがありません。このレベルの施策は様々なものがあり、今回の女性活躍推進法対応の中の目玉とも言える部分です。育児休業制度、短時間勤務制度、フレックスタイム・在宅勤務制度等々。これを機会にこのような仕組みが導入されることは、社員のワークライフバランスを考える上でも大変良いことだと思います。しかし多くの場合このレベルで忘れがちなのは、評価・報酬につながる人事制度です。レベル1での例で示しましたが、やり方の違い・スタイルの違いを受け入れるような評価の仕組みとなっているか?業績向上が最終目標であれば、その達成のためのやり方スタイルはどうであれ、結果として求める成果が出ていたかどうかが問われるべきです。ひょっとしたら今までとは全く別のやり方で良い結果が出たとしたら、そのやり方こそが会社として追求して行くべきやり方なのかもしれません。それを認めるような人事制度となっているかどうかがレベル2の大きなカギとなります。女性社員からの不満として、男性社員の仕事のやり方の効率の悪さが挙げられています。一般的に多くの女性社員は限られた時間の中で効率良く仕事を終わらせ、早く帰ろうとしますが、男性社員は残業前提で終業間際から会議を始めたりすることがあります。従来の価値観からすると、時間無制限で仕事をすることが評価されることが多いようです。しかし時間をかければよい結果が得られているとは思えません。そもそも結果の定義そのものも曖昧で、評価の基準が社員の態度・能力・姿勢であることが多いのです。結果そのものより、仕事の従来からのやり方を奨励していると言えます。このような制度の在り方にまで踏み込むことを考えてゆくところがレベル2です。

 

最後のレベル3は企業風土です。企業文化とも言われますが、社員一人ひとりの意識・行動に影響を与える大きな要素です。会社の業績は一人ひとりの社員の意識・行動から生み出されるものですから大変重要なものです。企業風土は直接これを変えることはできませんが、企業風土の形成要素と言われるものに手を加え、時間かけ変えていくことは可能です。代表的な形成要素は経営のリーダーシップ、経営戦略、組織構造そして人事制度です。現在どのような企業風土なのか測定・分析が出発点となります。世の中には様々な測定手法がありますが、重要なのは測定で得られた結果が変革のための対応につながる理論的な裏付けを持っているかどうかです。測定手法の説明は別の機会に譲るとして、企業風土は簡単に変えることはできませんが、長期的に女性を含めた多様な社員の活力を会社の業績につなげるカギとなるレベルです。

 

女性活躍推進法の施行を単なる報告作業の追加と見るのではなく、会社の業績向上につなげる有意義な仕事とするためには、上記3つのレベルからのアプローチをお勧めします。

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