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ホットな話題コーナー

 

「同一労働同一賃金」を考える

2016年4月30日

株式会社 みのり経営研究所
 取締役 齋藤 英子

 

安倍内閣は、正社員と非正社員の賃金格差解消の手段として、「同一労働同一賃金」の検討を推し進めている。これは多様な人材を採用し彼らに活躍してもらうための最初の一歩としては、大変良い方向である。性別や年齢、勤続年数、あるいはどのような異動も長時間労働もいとわない等の理由でそれぞれの社員の給与体系が違うという状況に対して、仕事に給与を払うという方向に導いてくれているからである。

 

ただし、「同一労働同一賃金」という言葉には、少しだけ修正が必要である。「同一労働同一賃金」という言葉をそのまま受け取れば、仕事が同じであれば同じ賃金ということを示していると考えられる。これは、一見正しいように思われる。しかし、「仕事が同じであれば」というところをどう判断するのか。そして、それが判断できたとして、仕事さえ同じであれば、同じ賃金で良いのだろうか?その仕事の出来栄えは賃金には反映されないのであろうか?そうであれば、極端に言えば、大きな仕事に就きさえすれば、仕事をしなくても高い賃金が払われることになってしまう。

 

弊社ホームページへ毎月の寄稿をしてくれている、クリルマン・リサーチのDavid Creelmanによれば、彼の住んでいるカナダ・オンタリオ州の労働法のめざしているところは、企業内における同一価値労働同一賃金(equal pay for jobs of equal value within a company)であり、その価値が測定されることを前提とし、かつ「賃金」に関しては、同額ではなく同一の給与レンジ(賃金の幅)でなくてはいけないということである。

 

上記を踏まえ、本稿は、「同一労働同一賃金」という言葉を、「同一価値労働同一範囲給与」とすることを提案する。では、「同一価値労働」はどうやって判定するのか、また「同一範囲給与」とはどのようなものなのか?

 

まず、「同一価値労働」の価値の判定は、仕事の中味を明確にして、その価値を一定の測定手法を用いて測定することである。具体的には、弊社が創立以来一貫して提案しているように、「役割分析を実施し仕事を役割として定義して、役割の重要度測定をすること」である。これまでのように、日々の活動が仕事だと思っていると、仕事の価値を判断することは困難である。仕事の価値を判断/測定するためには、仕事の見方を変える必要がある。仕事を役割として見ることが必要であり、そのためには役割の構造を可視化し、分かり易く定義することである。仕事が可視化され定義されれば、何らかのツールを用いて、役割の重要度を測定することが可能となる。測定の方法は各種あるので、自社でもっとも納得のゆくツールを使用して測定する。役割の重要度が同じであれば、「同一価値労働」ということである。

 

次に、「同一範囲給与」とはどういうことか?まず、仕事/役割を基にした給与体系を見てみよう。仕事/役割を基にした給与体系は、4種類ある。図1にそれらを示す。

 

 

図1: 仕事/役割を基にした4種類の給与体系

 


 

図の横軸は仕事/役割の重要度であり、評価の手法を使って測定された結果である。多くの日本企業の場合、この横軸が年齢であり、ここに大きな違いがある。この横軸の取り方は、図に示したように、測定した重要度を1ポイントごとで取る方法と、測定結果を大括りにして幅のある等級として取る方法の二種類がある。一般的には後者の方法を取ることが多い。

 

「同一範囲給与」に関係するのは縦軸である。縦軸は、給与額を示している。図の中で「同一範囲給与」に該当するのは、右側の「単一範囲給」と「等級範囲給」である。給与に範囲があることで、その仕事/役割に就いた人がどれだけその仕事/役割を全うしたかを、反映することができる。

 

つまり、仕事の中味を明確にし、その価値を測定する手法を用い、役割の重要度を測定して、「同一価値労働」を特定する。そして、その「同一価値労働」に対しては、その役割/仕事に就いた人が、どれだけきちんと仕事をしたのか、その出来栄えを反映することのできる範囲を持った「同一範囲給与」を設定するのである。

 

こうして設計された給与体系は、社員の年齢・性別などの属性あるいは雇用形態に関係なく適用することが可能となる。正社員・非正社員という法的に意味のない差別も無くすことができるようになり、多様な人材が力を発揮できる会社になる基盤を作ることが可能となる。

 

また、基本給のみならず、全ての給与費目に対して、合理的に説明できない限り、格差を認めないことも大切である。これには、自社の給与に対する考え方をもつことである。これを給与戦略、給与哲学、給与政策というような形で明確にすることが大切であるが、これに関しては、別稿で述べたい。

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