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ホットな話題コーナー

 

働き方改革の本丸―仕事の進め方、役割の定義

2017年4月7日

株式会社 みのり経営研究所
 代表取締役 秋山 健一郎

 

政府が働き方改革の実行計画をまとめた。9分野で改革の方向性を明示しているが、どれも表面的で、本質に迫るものが不足している。非正規の処遇、賃金引上げ、長時間労働の是正等々、それらの問題が何故起こっているかの本質的な議論が欠けている。「働き方の改革」である以上、現在の働き方がどのようなもので、それをどう変えるかの視点が不可欠である。

 

みのり経営研究所(みのり)では、十数年にわたり様々な企業でマネジメント研修をやらせて頂き、既に1万人近くの管理職の意識改革に携わってきた。その多くの企業は一部上場の大手企業で、制度的なものは最先端のものが導入されている企業である。ところがその制度を活用できるかどうかは、管理職の意識一つで変わってしまうことを実感している。柔軟な働き方や女性・若者の活躍等、上司である管理職が「そんなやり方は効率が悪い」「こう働くべきだ」と考えていれば、どんな制度があっても活用されない。部下である社員は、制度を利用することが上司の意にそぐわなければ使おうとしない。上司の評価が社員の行動を左右するのである。働き方改革のカギは上司たる管理職の意識にあり、その根源は評価の仕組みにある。そこに手を付けない限り、実のある改革は始動しない。

 

多くの日本企業における「管理職」は歴史的に「年功と能力評価」で管理職の地位に到達している。現在管理職になっている人々の多くは、日本企業の多くが競争力を失い、方向性を見失った「失われた20年」と言われる時代にキャリアを形成してきた。本来この時期に日本企業の実質的「働き方改革」が行われていなければならなかった。しかし結果的には従来型の「年功と能力評価」が温存され、現在の多くの管理職と言われる人たちが大量生産された。彼等の特徴は「自分たちには能力がある」と思い込みがちなこと、そして「自分のやり方が最善であり、他のやり方は間違っている」と考えがちなことである。


今その考え方が現場での仕事の進め方で壁に突き当たっている。多様な人材を活用して行くためには、多様な考え方・やり方を受け入れて行かなくてはならない。しかし彼らの成功体験がそれを拒ませている。従来型のやり方以外に、もっと効率的・効果的なやり方があることに気づくことが求められている。


また、日本の制度には効率・効果を考える視点が欠落している。組織を機能体としてではなく共同体としてとらえる傾向があるため、組織の求めるアウトプットが何かを議論するより、誰が上か下かという序列重視の発想に支配される傾向にある。オリンパス事件の時に役員の多くが「会社のためでなく、社長のために働いている」と言って違法行為を見逃してきたことがその典型的な例である。この基本的な仕組みを変えない限り、政府の狙っている働き方改革の実質的な推進は困難である。

ではそこにどう踏み込んでいくか?


組織を機能体として、それぞれの役割を明確に定義して行くことである。その役割に登用された社員の評価は、その定義された役割の求めるアウトプットを出したかどうかでなされる、決してその社員の性別・年齢・経歴・契約形態ではなく、かつそのやり方でもない。仕事の効率・効果はそのアウトプットを基準として測定される。このアウトプットは単に数字的な売上げや利益だけではなく、新規事業開発、品質や生産性、顧客との関係、部下の育成など定性的なものも含まれる。役割をどう定義するかが、経営者・管理職の大きな仕事である。


かつて製薬会社で営業の役割について「売上げ・利益」が本当に営業に求められるアウトプットかという議論をしたことがある。薬の売上げはその薬の効能・宣伝によるところが大きいのに、営業にそのような責任を負わせることが求める姿かという議論は、その後営業の行動を変える契機になったと自負している。

 

今回の実行計画の中に「テレワーク拡大」とある。多くの管理職は目の前に部下がいないと評価できないと考えている。評価の仕組みが従来通りであれば、テレワークそのものが成立しないことになる。実行計画が「生産性向上には力不足だ」という評価もある。生産性の基準は仕事のアウトプットである。その定義が出来ないのでは、その改善・向上は望めない。ところが実際の現場では従来のやり方が根を張っていて、仕事・役割の定義が出来ない。従来の業務分掌規程との違いが理解できない。

 

みのりでは定期的に役割定義のための手法紹介のセミナーを開催している。働き方改革の本丸とも言うべき、仕事・役割の定義の仕方を管理職の方々には習得して頂きたい。そして無駄な仕事は止め、早く帰り、有意義な人生を歩んでほしいと考えている。

 

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