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思いの実現を支える組織づくり 【第7回】

 

組織の詳細設計:ミクロデザイン

2013年4月23日

株式会社 みのり経営研究所 代表取締役
日本リーダーシップセンター株式会社 COO

秋山 健一郎

 

構造設計で明示された、それぞれの機能の意図するところを、具体的にそれぞれの役割・仕事に落とし込んでいくのが詳細設計、ミクロデザインと呼んでいるものです。経営の意図が一つひとつの役割・仕事に表現されていくプロセスです。詳細設計は、具体的には下記の3つの作業に分類されます。


1) 主要な役割の貢献責任を特定・表現する
2) 表現された貢献責任に基づいたそれぞれの役割の重要度を測定する
3) 付加価値分析に基づき人員計画を策定する

詳細設計では貢献責任としてその役割を特定・表現するだけでなく、その貢献責任に基づく重要度を認定し、人員計画まで落とし込みます。この詳細設計ができて初めて、構成メンバー一人ひとりが組織の目指す方向に向かって生き生きと働く組織づくりの基礎ができたと言えます。

貢献責任の定義は第五回目に説明した通りです。詳細設計では一つひとつの役割を貢献責任表現のルールに基づいて特定して行くプロセスです。大変な作業に見えますが、貢献責任はバランススコアカードの4つの視点(①財務、②顧客・外部、③内部ビジネスプロセス、④学習と成長)により捉えられており、分かり易いものとなっています。構造設計で策定した経営機能リストも、実はこの4つの視点を基に作られていますので、構造設計の時に十分な議論がなされていれば、貢献責任への落とし込みは簡単です。貢献責任の数は最大で9つですから、それぞれの視点に数個ずつの貢献責任が特定されることになります。

経営機能リストには、それぞれの視点別に大項目が設定されます。例えば、「財務の視点」の中には成長性、安全性、収益性等、また「顧客・外部の視点」には顧客、外部ステークホルダー等があり、これを経営領域と呼んでいます。そしてそれぞれの経営領域の中に中項目として様々な機能が盛り込まれます。そこには構造設計の段階で特定された当社として求められる機能が特定されています。前回触れた「営業」「生産」「開発」と言った一般的には機能と呼ばれるものも、ここでは「内部ビジネスプロセスの視点」における経営領域として扱われ、その下の中項目として、求められる機能が列挙されます。このリストを基に組織構造が選択されていますから、貢献責任はこのリストを基に作成されることになります。順番としては社長直下の役割から特定して行きます。どのような組織構造を選択するとしても、そこに盛り込まれる機能は当社として必要欠くべからざるものとして、特定されたものです。それが社長直下のそれぞれの役割に、過不足なく配分されている状態をめざし貢献責任として特定・表現されていきます。機能的組織ではある特定の経営領域の機能が、ある特定の役割に集中することになるでしょうし、事業部的組織では、それぞれの役割が同じような機能を分担し合うことになるでしょう。この段階ではそれぞれの役割が、求められる機能を過不足なく果たし得るような貢献責任として特定・表現されることを目標として作業が進められます。


直下の役割が特定されれば、あとはその貢献責任が順次下位の役割にブレークダウンされていくことになります。この作業の結果、この段階のアウトプットとして一つひとつの役割の貢献責任とは別に、それをまとめた形の「貢献責任マトリクス」というものが出来上がります。このマトリクスを通じて、組織構造の中でそれぞれの役割に重複や抜けが無いかが一目で分かるようになっています。このマトリクスは、水平関係と上下関係の二種類作成されます。それぞれの役割がヨコの関係でどのような機能を果たすべきか明確になると同時に、上司・部下の関係でも分担関係が明確となります。上司と部下だから同じことをやっていても良いという発想はありません。役割である以上、それぞれがそれぞれの明確な貢献責任を持つというのが、組織設計の基本的出発点です。

 

貢献責任が特定されると、次はそれぞれの役割の貢献責任の総体がどの程度の重要度を持つかを測定する作業に入ります。何故重要度測定か?前の段階での作業はあくまでも構造設計で特定された機能が、過不足なく果たされることを目標に貢献責任に落とし込まれていきます。「同じレベルの部長だからここまでの責任を持つべき」という配慮は排除されます。効果的機能という視点が優先されます。当然貢献責任の偏りという問題が起こり得ます。それがどの程度の差かを見るのがこの作業です。

 

多くの日本企業で、目標管理制度が導入されていますが、よく見られるのが評価の段階で、「難易度」という概念を持ち込むことです。それぞれの役割には難易度が厳然として存在しますので、これは当然なのですが、問題はその判断が恣意的に行われるケースが多いことです。貢献責任という概念が無ければ、そうならざるを得ませんので、毎期目標設定あるいは評価の時に、その目標が難しかったか・易しかったかの議論になります。役割が貢献責任で特定される組織においては、その難易度に該当するものが、詳細設計の段階で測定可能となります。さらにそれが会社として認定されます。本来仕事は常に自分の力を出し切り、限界に挑戦することが求められます。その挑戦すべき役割が、与えられる段階から明示されている状態を可能にするのが、この測定の作業です。これは既に述べたように、どのような人材がその役割に必要かを判定する重要な基準ともなります。このような作業を組織設計の段階でやっておくことが、組織の構成員が心置きなくその役割遂行にまい進できる基礎を提供することになります。

 

次回その測定のメカニズムを説明します。

 

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