2020年が幕を開けた。今年はオリンピック・パラリンピックで盛り上がることが必定だが、人事の世界でも大きな動きが注目される。4月1日から大企業に同一労働同一賃金ルールが適用される。それ以外にも働き方改革関連法として新しいルールが相次ぎ導入される。これに呼応するかのように昨年暮れに経団連は2020年の春季労使交渉で年功賃金の再検討を呼び掛ける方針を出している(日経新聞2019年12月4日)。年が明けてからは日経新聞が社説で「日本的雇用管理を断ち切るとき」(1月8日版)、「半世紀前のシステムを一新しよう」(1月15日版)と矢継ぎ早に日本企業の人事管理の在り方の変革を訴えている。いよいよ外堀が埋まってきた。令和は日本企業の「ジョブ型雇用」への転換元年となるのか?
そのカギは1月8日付日経新聞の社説に書かれているように「職務を明確にした『ジョブ型雇用』を積極的にとりいれるべきだ」にある。12月4日付日経新聞記事にも経団連の「雇用制度を見直す方向性として、あらかじめ職務を明確にするジョブ型雇用と複線的な制度の拡充」が挙げられている。職務の明確化は組織運営・人事管理の基本中の基本である。従業員の公平な処遇の出発点は職務にある。同一労働同一賃金が叫ばれるのは当然のことである。しかし戦後の日本の人事管理においては、様々な歴史的背景から「職務」は軽視されてきた。職務を明確化するにはそのための知識・スキルが必要であるが、残念なことに日本ではその蓄積がない。安易に職務明確化を進めようとすると、似て非なるものを追い求めることになる恐れがある。過去1990年代に「成果主義人事」と称し、職務明確化の知識・スキルが無いままに制度改革を推し進めた苦い経験がある。成果の何たるかの議論のないまま、単なる定量目標の押し付けあるいはノルマ主義に陥り、「成果主義人事」を否定する結果となってしまった。同じ轍は踏むべきではない。
令和の時代になり、「職務の明確化」が改めて脚光を浴びることとなったのは喜ばしい限りである。是非この機会に、日経社説が主張するように「令和モデルに一新」する方向に動き出して欲しいと考えている。そのためには「職務の明確化」が単なるお題目ではなく、本来あるべき知識・スキルに基づいたものとなることを期待している。みのりが過去16年蓄積した経験が生かせる舞台が出てくることを期待している。す。
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