高齢化に伴って、要介護・要支援の認定を受けた人の数は増え続けている。総務省統計局の最近の調査によれば、平成16年度では409万人であったのが、平成26年度には606万人と、たった10年間で約200万人も増加している。
実は筆者の母も、昨年階段から転倒し、頭に大けがを負って、要介護3に認定された。それから1年半がたち、母も要支援2まで回復してくれている。この1年半の間、筆者は仕事と介護の両立をしてきている。筆者の経験を紹介し、役割を基にした人事制度の場合の現場をご紹介したいと思い、筆をとっている。
みのり経営研究所(以下、みのりと略す)は、役割を基にした人事制度を提唱・実施している会社である。一人ひとりの社員には、役割が定義され、毎期初に役割定義に基づいて、目標を設定し、上司と部下で1年間の仕事を合意し、期末に目標の達成度を評価する。
筆者が介護生活に入ったのは、2015年1月であり、みのりの会計年度も1月~12月であるので、ちょうど新年度の目標を設定する時期であった。そこでまず仕事と介護の両立をするためには、筆者はどれだけの時間を仕事に配分できるのかを考え、その結果として、これまでの働き方の50%としてもらうように願い出た。
役割定義はしっかりとしてある。すでにご存じの方もいらっしゃると思うが、みのりの役割定義では、役割を「貢献責任」という形で定義する。つまり、この役割は何を会社に貢献すべき役割なのかが明確になっている。そこでこれまでの貢献責任の中で、何を削り、何を残すべきかを上司と相談し、これまでの半分の時間でできると思われるギリギリの線で、貢献責任を見直した。
見直した貢献責任に対して、2015年度の目標を設定し、走り始めたのである。2016年度(現在)も、この貢献責任を全うするよう、仕事を続けている。
役割が明確に定義されているからこそ、時間的に制約ができてしまった社員でも、どこまでできるのかが、すぐに設定することができた。もちろん、筆者が50%の役割となった分、他の社員の負担は増える。従って、その負担をできる限り軽減できるよう、社員の補充も視野に入れた。みのりの場合、タイミングよく、大変優秀な人材が、やはり子育て中という時間的制約のある中で働ける環境を探していて、入社してくれたことは、とてもラッキーなことであった。ただ、このように人の補充がスムーズにいくケースばかりではない。そのような場合には、残された貢献責任を割り振り、割り振られた社員の役割が大きくなり、結果として昇進という対応も可能である。
給与と言えば、読者の皆さんの中には、仕事への時間配分が50%になって、給与はどうなるのかと言う疑問を持たれた方も多いと思う。これも役割を基にした給与制度であるので、その対応は誠に簡単である。新たに設定した、小さくなった役割の重さを測定して、その重さに見合った給与レベルにしただけである。
手前味噌になってしまうが、役割を基にした人事制度であれば、これから更に増えてゆくことが想定される、時間的制約のある人が突然皆さんの会社で出てきても、なにもあわてることなく対応してゆくことが可能であるし、また、突然、時間的制約ができてしまった社員も、そのような処遇をしてくれる会社に感謝の念を抱かずにはいられないと、経験から思うのである。
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