今年4月に改正高年齢者雇用安定法(高年法)が施行され、各社、その対応に工夫を凝らしている。2013年8月17日付の日経新聞では、高齢者の賃金引き上げに向けた、多くの企業の賃金体系の見直しの内容が紹介された。
ここで大切なのは、今回の賃金体系の見直しを、各企業がどのような姿勢で取り組んでいるのかと言うことである。とにかく、60歳から65歳までの延長された5年間への対応と言う姿勢が一つの選択肢である。しかし、別の選択肢としては、これを、年齢のみならず、性別・国籍等、すべての多様な人材が活き活きと働いていくことのできる人事制度改革への大きなチャンスと捉える姿勢である。
前者の姿勢でいる限り、現在の、年齢を横軸に取った賃金の上昇カーブを如何に高齢者へシフトできるか、と言った問題意識で解決策を探してゆくことになる。しかし、これでは、いくら是正しようと、やはり、現役世代の賃金を削って高齢者へシフトするか、あるいは、現役世代の賃金水準は下げずに、60歳以上の賃金は出来るだけ上げるとしても現役世代よりは少ないものとしかできない、と言った対応策となってしまおう。
すでに新聞紙上でも指摘されている通り、あくまでも年齢を基準とした人事制度を守っていこうという対応は、現役世代、しかも最も働き盛りの世代の給与レベルを引き下げるということであり、これで、社員の働く意欲が増して、生産性が向上するとは、とても言い難い。
若い人も、働き盛りの人も、高年齢の人も、誰もが自分の役割/仕事と、それを通した会社への貢献に見合った給与を得られる制度への転換をする大きなチャンスを、この高年法が与えてくれていると言えるのではないだろうか。そして、そのためには、年齢ではなく、役割/仕事を横軸に取った給与体系が必要となる。そのためには、人事制度の軸自体を、現在の「ヒト」から「役割/仕事」へ転換する必要がある。つまり、人事制度の抜本的な改革が必要とされているのである。
高年法を、当面のところ対応しなければならない負担とみるか、それとも、将来をも見据えてチャンスとみるか、それによって、これから先の少子高齢化、グローバル化の時代に対応してゆける企業となれるかどうかが決まると言っても過言ではない。多くの日本企業が、この大きなチャンスを是非とも逃さず、社員が活き活きと働き、それによって生産性が上がってゆくようになることを切に願うものである。
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