みのり経営研究所は人事制度設計を中心とした仕事を生業としてきましたが、時として組織設計の仕事もやらせて頂いています。人事は経営を支えるものであるという視点から人事制度を設計していくと、必ず突き当たるのが社員の仕事・役割は何かという問題です。すでに明確な組織設計が成され、一人ひとりの役割が明確になっている企業であれば、そこから出発して社員の経営全体への貢献度を基準とした人事制度設計が可能となります。しかし多くの会社では組織構造は描けているのですが、それが一人ひとりの社員の役割までに落とし込まれていません。こんな場合現在の組織構造の中で、それぞれの社員がどんな役割を持っているか改めて明確にすることから、人事制度設計を行うケースが多いのです。またそんな作業をしていると、現在の組織上の問題点が多数出てきて、結果として組織構造を再設計してほしいという要請にまでつながることがあるのです。
前回の連載「人事制度は世につれ人につれ」でも第5回で「組織構造と役割」と題し、人事制度が役割を基盤として作り上げられることを紹介しました。今回はその部分に焦点を当て、熱い思いを持った経営者が、その思い実現のために組織をどう設計していくべきかを述べたいと思います。社員一人ひとりが生き生きと会社の理念実現のために前向きに働いていくためには、人事制度が大きな役割を担います。そしてその人事制度が機能するためには、しっかりとした組織設計の上に、整合的に設計されていることが重要です。人事制度だけが良いとか悪いとかの議論ではありません。組織にも人事にも経営の思いが込められ、社員一人ひとりに伝わることが重要です。
一般的には成長段階や規模を抜きに組織を議論することはできません。起業したてで数十人規模の会社であれば、社長が全員の顔を見ながら、一人ひとりに思いを伝えていくことは可能かもしれません。数千人を超える規模の会社であればコミュニケーションのための大がかりな仕組みが必要なことは確かです。しかしこれから述べようとしていることは、極めて基本的なことで、どのような規模の組織にも共通して適用できる(すべき)視点とアプローチの仕方です。社長が、あるいは人事担当者が、社員によりよく生き生きと働いてもらいたいと考えた時にどうしたらいいか。やみくもに号令をかけるのではなく、一人ひとりに思いが伝わり、その思い実現のために一人ひとりが前向きに取り組んでくれるための組織づくり。そんな視点で書いていこうと考えています。
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