前回は、当社の総人件費管理のための、あるべき分配モデルを構築しました。この分配モデルは長期的な到達点で、例に示している当社の場合には、中期経営計画の最後の年である2015年の到達点となります。そこで今回は、このモデルへどのような道筋で到達するかという、毎年のシナリオを策定することになります。このシナリオができれば、毎年の総人件費枠が設定されたことになります。
前回設定したモデルの算定条件は、下記の通りでした。
【例】 当社のモデル算定条件
付加価値率 35%
売上高 300億円
付加価値経常利益率 43%
従業員数 400名
1人当たり人件費 900万円
例えば、中期経営計画で2011年から2015年までの売上高と経常利益額の目標値が以下のように設定されているとします。
(単位:億円) 現状 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
売上高 200 220 240 260 280 300
経常利益額 28 31 34 37 41 45
算定条件のなかで、従業員数400名と付加価値率35%は現状維持として、一定でした。従って、5つの算定条件の中で、実は5年分が決まっていないのは、1人当たり人件費のみです。そこで、この1人あたり人件費を5年間で如何に現実的にモデル値に近づけてゆくかを決めることで、5年分の付加価値構造が出来上がり、毎年の人件費枠が設定されます。
モデルの1人当たり人件費は2015年に900万円です。これを2011年から一気に900万円にすると、下記の通り、企業維持費率(コスト)が現状でも20%と低いのに、2011年には13%となってしまい、現実的ではありません。
【例】 1人当たり人件費を一気に900万円にする場合
そこで、1人当たり人件費を徐々に上げて行くことでモデル値を達成できるように計画することになります。例えば、以下のような計画となりえます。
これで中期経営計画を達成できる5年間の人件費枠ができました。勿論これはあくまで計画です。次回は、この計画に沿って、実際に如何にして、毎年の基本給昇給率、基本給総額そして賞与原資を決めてゆくのかを見てゆくことにしましょう。
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