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【第5回】組織構造と役割


 

前今回は二つ目の基本要素である、「経営戦略を支える組織構造/役割に根ざした」制度とは、具体的にはどのようなものなのかを考えて見ましょう。

全社経営戦略を達成するためには、それに適した組織構造が必要となります。そのためには、組織を設計するときに、経営戦略を達成するための達成要因(クリティカル・サクセス・ファクター)を見極めて、それらを設計基準として、最適の構造を選択してゆきます。例えば、限られた分野の製品に特化して、その技術的強みでニッチ市場制覇を目指す戦略を取る会社では、技術部、営業部、製造部と言った機能別の組織を取る可能性があります。一方、製品ラインが多岐にわたり、海外を含む広範囲な地域をターゲットとしている会社では、製品別や地域別の事業部制を取る可能性があります。いずれにしろ、その経営戦略を達成するために最適と考えられる組織の入れ物が、こうして出来上がります。

しかし、入れ物が出来ただけで終わってしまっては、何にもなりません。ここからが、まさに戦略と人を結びつける部分となります。それは、この入れ物の中の一つ一つの役割を明確にしてゆくことです。

そして、ここで大切なことは、社長から末端の社員まで、戦略達成に向かってベクトルを合わせて役割をブレークダウンすることです。でも、昔のように、詳細に職務記述書を作ると言うことではありません。職務記述書は一昔前の、変化の遅かった時代のものです。環境変化の激しい現代では、この仕事をこういう風にやると言うような定義の仕方では、まったく追いついてはいけません。

それではどうしたら良いのでしょうか?それは、経営戦略達成に対して、どういう貢献をこの役割は期待されているのかという視点を持つということです。そして、その視点で役割を会社からの期待と言う形で定義するということです。その際に大切なことは、戦略と同じ中長期的な視点で、役割の全体をカバーし、かつ業務活動のような細かいレベルに陥らないように定義することです。そのためには、近年かなり浸透してきた、バランス・スコアカードのような考え方が大変有効です。財務業績だけでなく、顧客との関係、社内のプロセス、人材育成といった視点で各役割に期待する貢献を見て行けば、かなりの確率で役割の全体をカバーすることができます。そして、ここで一つ、私たちがほぼ20年の間、仕事・役割の定義をしてきた経験に基づいたヒントがあります。それは、貢献の数を7つ前後まで絞るということです。これで、業務活動の細かいレベルに陥ることを避けることができるのです。

たとえば、ある会社(X社)の営業課長という役割を考えて見ましょう。昔の職務記述書のように業務活動レベルでこの仕事を定義しようとすると、顧客訪問をする、プリゼンテーションを実施する、営業日報を作成する、部下の営業活動に同行する、以下数え切れないほどの項目が出てきてしまいます。これを、期待される貢献レベルで、4つの視点、7つ前後までの絞込みで定義してみましょう。もちろん、経営戦略・組織設計によりその役割は会社によって違いが有りますので、どこの営業課長もこうだということではありません。 例えば、X社の場合にはと言うことで見てみると、(1) 課の売上目標を達成する、(2) 課の利益を拡大する、(3) 顧客との良好な関係を構築する、(4) 新規顧客を開拓する、(5)工場の稼働率平準化に貢献する、(6)課の組織効率を向上させる、(7)部下を育成する、の7つの期待貢献項目で定義することが可能でした。 X社の経営戦略では、この7つで営業課長の役割の全体が押さえられたと言うことになります。その上、業務活動レベルではないので、これら7つに対するやり方は、この営業課長の創意工夫で、日々新たなやり方を実践することも可能です。

このように、活動レベルではない大きな概念で、期待される貢献を押さえてゆくことで、社長から末端の社員まで戦略達成に向かって一丸となって進んでゆく基盤ができます。

経営戦略を支えるための組織構造が生まれ、一つ一つの役割がどのように経営戦略達成のための貢献をするべきかを明確にする。そして、個々の制度、例えば給与制度や評価制度、登用制度等、全ての人事制度をこれらの役割を基盤として作り上げることによって、個々の制度が常に経営戦略を支えていると言うことが担保され安心することができます。

以上、前回と今回で、「経営と直結し、経営戦略の達成を支えてゆくことのできる」制度の具体像を見てきました。次回からは、2つ目のキーワーである、「社員が生き生きと気持ちよく働くことのできる環境を提供できる」制度の最初の基本要素である、「生き生きと働くための長期的なキャリアが見えている」制度とはどのようなものかについて考察します。

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