これまで9回にわたって、これからの安定低成長経済と少子高齢化社会の中で、日本の企業にとって必要な人事制度とはどのようなものなのかを考察してきました。今回は最終回として、これまでの内容を纏めてみたいと思います。
これからの日本に必要な人事制度とはどのようなものか、一言でまとめれば、それは「経営に直結し、かつ、社員が生き生きと気持ちよく働くことのできる」人事制度です。なぜかと言うと、これからの安定低成長経済の中では、厳しい競争の中で会社の目標達成に向かって社員一人ひとりが知恵を出し、ベクトルを合わせて働くことが必要となるからです。そしてまた、少子高齢化の社会になりますから、会社に必要な人材を採用して引きとめておけるような魅力ある会社でなければならないからです。
それでは、そのような人事制度とは、具体的にはどのようなものでしょうか。それは、企業理念/経営戦略から導き出された人事戦略と組織構造、そしてその組織構造の中味である一人ひとりに期待される役割に根ざした人事制度です。これらに根ざすことによってのみ、人事制度が経営と直結し、経営戦略の実現を支えることが可能となります。そして、個々の制度は、社員一人ひとりが生き生きと働けるように、長期的なキャリアを見通すことが出来るキャリアプラン制度、期待されている役割をどれだけやったかをきちんと評価する評価制度、人間らしく生きてゆけるための経済基盤を提供できる給与制度、そして価値観の違う人々が一緒に集い、仕事も私生活も調和をとって生きてゆける施策を提供できる、統合的な人事制度です。人事制度は、会社で働いてくれる全ての「人」に関わるものですから、ビジネス、組織、処遇の全てに関連したものでなければなりません。これまでのように人事は「ヒト」のこと、ビジネスは「カネ」のことと切れてしまっていてはだめなのです。経営戦略、その戦略実現のための一人ひとりの社員の役割、その役割に見合った責任と処遇の全体の連動が重要です。だからこそ、「統合的な」人事制度でなければならないのです。そして、その統合を完成するのが、一人ひとりに期待されている役割そのものです。これが、経営戦略と人事制度の連結ピンとなって、全体を統合してゆきます。
これからの日本に必要な人事制度、それは、一人ひとりの役割が経営戦略と人事制度を結びつける連結ピンとなって、経営と直結し、かつ社員が生き生きと気持ちよく働くことができる人事諸施策を統合する、一大システムと言うことができるでしょう。
これまで10回にわたり、辛抱強くお読みくださった読者の方々にここで深くお礼を申し上げます。次回の連載まで、しばしの休憩とさせていただきます。
皆様どうもありがとうございました。