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辛口人事用語集

人事制度に関する用語をちょっと辛口にご説明しています。人事制度設計にお役立て下さい。

1. 職能資格等級

仕事を遂行する能力が定義できるという前提に基づき構築された等級。この等級に基づき給与額が決定される。但し組織の中で0どのような役割責任を負うか、あるいはどのような仕事をするかとは無関係に設計されることが多い。また能力と言われるものの定義は曖昧であり、恣意的な評価の温床となっている。従い同じ等級の中に様々な能力の社員が存在する。

2. 職能資格制度

職能資格等級に基づく処遇制度。年功制度の変形。能力が測定できると信じている人が好む制度。年功制度は純粋に年齢が基準で明確であるが、職能資格制度は基準が曖昧なため、上司次第で昇進昇格が決まり、処遇条件も決まる仕組み。

3. 職務等級

職務の内容に基づく等級制度。機能的組織の場合、組織設計が適確になされれば、結果としての職務が明確に定義され、その職務定義に基づき等級が設計される。しかしながら日本企業においては、伝統的に共同体的な組織運営に長けており、職務という発想が無く、多くの場合職務と言いながら、職務ではなく、その職務を遂行する人間に焦点を当てた定義づけがなされている。

4. 人事考課制度

自分の好みの部下の評価を上げるための仕組み。そのため考課基準なるものは極力抽象的で、如何様にも判定可能な表現となる。一般的には能力・態度・業績と言ったものが並ぶが、それぞれ基準は曖昧。上司より能力がある人間は、上司にとって態度が良いようには絶対見られない。結果として常に上司より能力が低い人間が好評価を得るため、長期的には企業の活力が殺がれて行く仕組み。

5. 日本的成果主義

目標により仕事を管理する仕組み。自分の仕事を主体的に管理することを通じ、自身の成長を含めた大きな成果を期待する仕組み。上司には部下育成の視点が必要だが、一般的には単に部下の評価のための仕組みと理解されている。多くの場合目標を押し付け、達成できなかった社員の評価を下げ、意欲を喪失させるという逆の現象が起きている。上司自身が、目標の前提としての「職務・仕事」が理解できておらず、部下に説明できていないことが原因。

6. 職 務

組織の基本要素。機能的組織であれば、戦略にせよ人事にせよここが出発点であるのが原則。ただ機能的組織になじみのない人々には忌み嫌われる言葉。共同体的組織運営に慣れ親しんだ彼等が好むのは「職務は変幻自在で、本人のやる気でどこまでも大きくできるもの」。この本音は「上司の意向でどうとでも評価できる」。あるいは「職業に貴賤は無い」とも言われるが、この本音も「貴賤があるのは社員」。

7. 日本的採用方式

学校からの新卒採用が一般的。会社としての求める人材像は抽象的かつ一般的であり、従って選別のための基準も一般的。特に有名企業にとっては、応募者が多いため、大学の入学試験と同じで、入り口を狭き門とするため、複雑怪奇な仕組みを作り上げている。ただその仕組みはほとんど外部からの受け売りで、自前の基準に基づくものは少ない。採用後の評価で、堂々と「能力が無い人間」を輩出して平気でいられる。

8. ジョブ型人事制度

「メンバーシップ型人事制度」に対比する形で登場した言葉である。コロナ禍でリモートワークが広がり、従来の人事制度に基づく評価が機能しなくなったのを機会に急速に広まっている。リモートワークにより上司が部下を評価できないことで、現行の評価制度の欠陥が露呈したと言える。多くの日本企業の人事制度は、社員の属人的な要素(年齢・性別・能力・姿勢など)を基盤として構築されているが、このあり方が人事制度の公正性と言う視点から問題なのである。社員の公正な評価は、本来組織として社員に求められる「ジョブ」(役割・職務)が基準として明確に規定されていて初めて可能となる。評価はその規定された「ジョブ」を基準として行われ、決してその社員の能力・姿勢などという曖昧な基準で恣意的になされるものではない。社員の公正な処遇を目指すのであれば、人事制度はそもそも『ジョブ』に基づくべきものであり、「ジョブ型人事制度」とあえて呼ぶ必要はない。「メンバーシップ型人事制度」も同様に、社員を公正に扱うことを目指すのであれば、基準を「ジョブ」とするべきである。

9. 目標管理制度

目標により仕事を管理する仕組み。自分の仕事を主体的に管理することを通じ、自身の成長を含めた大きな成果を期待する仕組み。上司には部下育成の視点が必要だが、一般的には単に部下の評価のための仕組みと理解されている。多くの場合目標を押し付け、達成できなかった社員の評価を下げ、意欲を喪失させるという逆の現象が起きている。上司自身が、目標の前提としての「職務・仕事」が理解できておらず、部下に説明できていないことが原因。

10. ダイバーシティ

多様性と訳され、近年グローバル化が叫ばれる中、急浮上した概念。多様性の内容は、男女・世代・中途採用・障がい者等多岐にわたる。多くの会社で、様々な施策導入時に、「わが社ではダイバーシティを重視している」と枕詞のように使われている。しかしほとんどの場合、本音では従来通りの均質な、阿吽(あうん)の呼吸の通じる風土を良しとしているため、お題目で終わっている。本来ダイバーシティ(Diversity)&インクルージョン(Inclusion)がセットとなっている言葉。意味するところは多様性を「包含する」あるいは「受容する」と言うところが肝。阿吽の呼吸とは相対する概念で、一つ一つの決定・行動に対する丁寧な説明が求められる。多くの企業で、今は女性活躍のための各種制度が充実してきているが、これが使えるかどうかは管理職の意識次第。上司が「育休を取るのは迷惑だ」と言うような意識状態にあれば、制度を使う部下はいなくなる。管理職(だけではないが多くの場合)の意識状態を放置したまま、如何にもグローバル企業を目指していますと言う会社には都合のいい言葉。インクルージョンを省いてまかり通っているのは、さもありなんと思われる。

11. コンピテンシー

成果主義が問題視され始めた1990年代後半からもてはやされた概念。もともとはハーバード大学のマクレランド教授の研究成果をMcBerと言う会社がビジネス向けに開発した概念で、「高い業績を上げている従業員の行動特性」と言われている。結果的には、その行動特性をモデル化して評価基準とし従業員を評価するところにつなげ、人事評価制度に組み込まれてきた。北米では、職務中心の人事思想に風穴を開ける新鮮な概念として注目を集めた。日本では成果主義に代わるものとして導入されたが、既に存在していた「職能」と同じものを、カタカナで置き換えただけに終わっている。旧来の人事関係者には好都合の概念であったが、誰もその明確な違いを説明できない。マクレランドの研究の出発点は職務である。職務の概念無くては、高い業績の定義ができない。特定された行動特性はその職務に特有なものとして定義されている。ところが日本では、そこのところが理解できていない。古いものを破壊する概念が、古いものを復活するために使われるという滑稽な現象。もう不要と思われる概念だが、まだときどき見かける。

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