安倍政権の成長戦略の中で、女性の活躍が中核と位置づけられたことは、大変喜ばしいことである。これが、多様な人材が活躍することができる社会につながる一歩となることが期待される。
女性を含めた多様な人材が活躍するためには、日本企業において、本気でダイバーシティ・マネジメントを推進してゆくことが重要であるが、現実は、本気でやっているところは少数派である。
それでは、これからの日本社会を見据えて、本気で多様な人材を活かしてゆこうとするのであれば、日本企業は何をしなければならないのか?2004年からダイバーシティ・マネジメントの研修をしてきた経験に基づくと、3つの大きなポイントが見えてくる。一つ目は企業風土、二つ目はプロセス、そして三つ目は各社員である。
まず一つ目の企業風土においては、ダイバーシティを受容する文化を形成するために、色々のことをしてゆかなければならない。その中の最も重要なことを一つだけ挙げるのであれば、なんといっても経営トップの本気度とその伝達である。風土はトップの考え方に大きく影響される。これは、これまで多くの企業のコンサルティングをしている中での実感でもある。本気でダイバーシティ・マネジメントに取り組んでいる企業には、必ず、本気の経営トップが居て、ご自分の言葉で社員全員に語りかけている。
二つ目のプロセスとは、人材マネジメントプロセスのことで、大きく分けると、人事制度の転換と支援諸施策群である。現在、時短、フレキシブルな勤務体系等々、多様な人材が活躍できるように支援する諸施策群はかなり充実してきた企業が多い。しかし、一方で、多様な人材を受け入れられる人事制度への転換を行っている企業は皆無に等しいのではないだろうか。長期的に多様な人材が活躍するためには、評価、処遇、キャリア構築に渡る人事制度を「ヒト」ではなく「仕事」を軸としたものにする必要がある。具体的には、社内の仕事をきちんと定義し、その定義に基づいて、評価し報酬を決め、キャリアを考えてゆくことができる制度である。この制度の要は、仕事の定義であり、それを避けている企業が多いが、これこそ、多様な人材を受容するための唯一のキーと言っても過言ではない。
三つ目の各社員とは、社員一人ひとりのレベルで、多様な人材を活かすということはどうすればよいのかを、知識ではなく、心の底から気づかせるということである。気づいていないからこそ、時短を取らせてあげなければいけないと頭では理解していても、忙しいときには、つい、時短を取るような人は要らないと考えてしまう上司が出てくるのである。気づかせるためには、会社としてそれなりの訓練を提供してゆくことが必要である。
以上、簡単に3つの大きなポイントに触れた。国のトップが本気で女性活躍を推進してゆくという意思を明確にした。次は企業の番である。企業のトップが本気で女性を含む多様な人材を受け入れ、彼らに活き活きと活躍してもらうことができるよう、ぜひともこれら3つのポイントを外さず、推進し続けることを願うものである。
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