前回、チャットGPTの有用性についてお伝えしました。今回はそのチャットGPTを活用する際のリスクと対策について触れてみます。既に前回と前々回にわたるチャットGPTとの対話を通じて、私自身その便利さと同時にその危険性も感じてきました。チャットGPTはあまりにも便利なため、提供されたアウトプットをそのまま使用したくなる誘惑にも駆られますが、常に出力された結果が本当に自分の望んでいた内容なのか、そのアウトプットが外部に提供された場合どのような反応がありうるかを厳しく吟味する必要があります。
まず、一般的に指摘されるいくつかのリスクを挙げてみます。
1.偽情報やバイアス:
チャットGPTは大量のテキストデータを学習するため、誤った情報やバイアスのある情報を生成する可能性があります。特に、ネット上のフェイクニュースや偏った情報源から学習した場合、そのバイアスや偏りが反映される可能性があるのです。
2.個人情報の漏洩:
チャットGPTと対話を行う場合、ユーザーの個人情報や機密情報が漏洩するリスクがあります。特に、不正アクセスや、セキュリティ上の脆弱性を悪用される可能性も考慮すべきです。
3.倫理的な問題:
チャットGPTは倫理的な問題を含む文章を生成する可能性があります。例えば、暴力的な内容、過度にセンセーショナルな表現、あるいは宗教的・政治的なバイアスを持った文章の生成などです。
これらが全てではありませんが典型的なリスクであり、これらへの対策を考えておくことが生成された文章が引き起こす問題を最小化することになります。
1.データのクオリティとバイアスの管理:
私自身の経験でも、最初の記事で書いたようにチャットGPTは平然と(そのような意図はないとは思いますが)偽りのデータを提示してきますし、間違いを指摘したときには丁寧に謝罪もされます。悪い気はしないのですが、目的とする文章がそのまま外部に提供されたとしたら大問題になる可能性を秘めています。必ず信頼できる情報源にその内容を確認する必要があります。逆に言うと情報の正確性を検証しているかどうかが専門家としての力量を示しているとも言えます。特に決して間違いとは言い切れないが、ある方向にバイアスがかかっている場合など、そのバイアスを排除することが専門家としての識見と言えます。「チャットGPTとの共同作業」と表現したのも、まさにそのやり取りを通して自分の考え方が正しい情報に基づいているかの検証にもつながるからです。チャットGPTが自分の力量を試しているとも言えます。
2.個人情報の漏洩:
チャットGPTとリアルタイムの対話を行う場合、個人情報や機密情報が漏洩するリスクがあるということは認識しておくべきです。これは単に自分の個人情報だけでなく関係者の情報に関しても慎重に扱うべきだと言うことです。特に、不正アクセスや、セキュリティ上の脆弱性を悪用される可能性も考慮し、システムのセキュリティ対策やデータの保護に十分な注意を払うことは当然として、そのような情報は基本的には記載を避け、最終的な文章・報告書等で記載の必要がある場合は別途制作物を管理理するなどの対応が必要です。
3.倫理的な問題:
私自身はチャットGPTに倫理的な問題を含んだ文章を作成された経験はありません。しかし急いでいて丁寧な読み返しなどの点検ができないときには起こりうる問題と考えていた方が良いでしょう。特に人事関係の仕事は様々な微妙な問題をはらむ案件が多いので、その点は常に注意を要します。人事関係者であれば、日常的に意識されている範囲で基本的なルールを意識しておくことが、外部から倫理的な問題を指摘されることを避ける上で必要と思われます。
以上が一般的に指摘されるチャットGPTのリスクと対策です。人事の専門家として仕事を進めて行く上で、気を付けておくべき点として整理してみました。実はチャットGPTからもっと詳細な対策の提案がありましたが、実用的な視点からは以上で十分と判断して省いています。ご参考までに提案されたものを下記します。
「明確なレビュープロセス」、「機密情報の排除」、「責任ある引用」「最新情報の把握: AI言語モデルの進化や開発者からのアップデート」。「これらの追加対策を取り入れることで、記事のメッセージを更に強化し、チャットGPT生成コンテンツの責任ある利用と意識向上を促進できるでしょう」とコメントがついていました。確かにその通りですが、実用的な観点からはあまり対策が複雑化して重荷になるようでは使い勝手が悪くなると思われます。
技術の進展とともにリスクそのものも、その対応策も複雑化していく可能性があります。しかし常に生成された内容が本当に自分の求めているものであるかどうか?その内容に対して自分として最後まで責任を持てる内容かどうかを吟味する姿勢が一番大切な点だと思います。その姿勢があれば、チャットGPTは自分の仕事を進める上での力強いパートナーとなることを確信しています。