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  • 執筆者の写真齋藤 英子

多様な人材から選ばれる会社へ


 

ビジネスの世界はますますグローバル競争が激しくなるなか、日本は人口減少時代に入っています。そして、すでに労働力不足が顕著になっている業界もあります。安倍政権は、人口減少時代に対して、1億総活躍などと言っています。これが具体的には何なのかは、担当大臣まで新設されていますので、そこで明確にしてくださることを期待するしかありません。

人口減少時代の労働市場においては、働き手の方が有利となります。そして、その働き手に選んでもらえる会社にならなければ、生き残っていけないでしょう。これまでのような、日本人、男性、新卒でないと相手にしない年次管理の仕組みでは、多様な人材から選んでもらうことはできません。多様な働き方を許容し、多様な人材に活躍してもらえる準備をしだすべきです。

どのような準備が必要なのでしょうか?多様な人材が生き生きと働き、活躍できるためには、それを可能とする人事制度を整えておくことは必須です。そのような制度とは、結論から言ってしまえば、経営への貢献と仕事の結果に基づいた人事制度と言うことになります。

多様な人材が多様な働き方をしても、きちんと評価し、処遇する。これを実現するためには、その人がやった仕事が、どれだけ経営に貢献しているのかが評価され、処遇されることが必要です。その人自体を評価するのではありません。これまでのような、「ヒト」を軸として、人の資質やいわゆる能力といわれるもので評価していては、これまで中心となっていた人たちしか活躍することができません。つまり、人事制度の軸を大きく変換することが必要です。

そんなことは大変すぎる、手間がかかりすぎるという人事部では、これから先、会社経営を支えてゆくことはできないでしょう。たしかに最初の導入時には、仕事を明確にしてゆくことが必要ですので、規模の大きな会社では、大変な作業となります。しかし、一度導入してしまえば、あとは、メンテナンスの段階となります。最初の一歩を踏みだせるかどうか、ここが経営を支えてゆけるかどうかの境目でしょう。

具体的に必要な準備は、二つに大きく分けることができます。一つは、人事思想を明確化することです。そしてもう一つは、仕事の内容を経営戦略の視点から明確化し、人事思想に基づいて制度を構築するということです。

まず一つ目は、人事思想の明確化です。その出発点は、企業理念であり、経営戦略です。これを吟味し、これらを、現在と近未来の環境の中で実現するためには、どのような思想で社員を処遇するのか。この視点で、人事戦略を明確にするとともに、会社として、評価や報酬に対して、どのような考え方をしているのかを明文化します。これまでの人事思想で、多様な人材が活躍できるのか?経営への貢献、仕事の結果で評価し、処遇する人事思想が必要なことが見えてくるはずです。

そして、二つ目は、仕事の明確化と制度設計です。経営への貢献、仕事の結果で評価し処遇するためには、まず仕事を、経営貢献の視点から、明確に定義することが必要です。それには、仕事の見方を変える必要があります。これまでのように、日々の活動が仕事だと思っていれば、仕事の定義は不可能です。仕事を役割として見ることです。そして、図1のように、役割の構造を可視化し、貢献責任という層で定義してゆくことです。




図2は、プロジェクトマネジャーの役割定義の例です。このように、7つ前後の責任として定義することで、経営に対して何を貢献すべきかが明確になります。





このようにして、全社員の役割が明確化されたら、人事思想に基づいた、経営への貢献/仕事の結果で評価/処遇する人事制度構築の基盤ができたことになります。基盤ができれば、あとは、人事思想に基づいて、制度を構築してゆくだけです。

人口減少時代では、多様な人材から選択される会社になることが重要です。そして、そのような会社の中で、多くの多様な人材が活躍することを願うものであります。


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