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  • 執筆者の写真齋藤 英子

【最終回】これからの総額人件費管理


 

これまで9回にわたって、社員が気持ちよく働ける人事制度における総人件費管理はどうするのかと言う観点で、付加価値配分に基づくあるべき総人件費決定の仕組みを考察してきました。今回は最終回として、これまでの内容を纏めると共に、付加価値分析のその他の利用方法にも触れて、今回の連載を締めくくりたいと思います。

我社のあるべき総人件費をどう決定するか?これに対する答が、経営と社員が生み出した付加価値の、あるべき分配構造を見つけることでした。これが見つかれば、あとは、その構造の実現に向かって経営と社員で力を合わせて進んでゆけばよいのです。

では、そのあるべき分配構造はどうしたら見つかるのでしょうか?それにはまず、己を知り、他を知った上で、己の目標を達成することができる、あるべき分配モデルを作り上げることでした。具体的には、自社と競合他社あるいは目標としている企業の、付加価値分配構造を算定して、比較してみることから始めました。そうすると、自社の付加価値配分の強み、弱みが、1人当たり人件費との関係で明らかになってきます。ここで、1人当たり人件費を1人当たりの報酬水準とみなすと、例えば、労働分配率が高いのに、1人当たり報酬水準が低い企業、労働分配率が低いのに1人当たり報酬水準が高い企業など、一目瞭然となるのが、お分かりいただけたと思います。そこで、我社は、経営計画の売上や付加価値額を達成しつつ、社員にも十分に還元してゆくためには、どういう付加価値構造が良いのか、これをじっくり考えて、あるべき分配モデルを作り上げるのが、重要なところでした。

この分配モデルができてしまったら、あとは、それを何年で実現可能なのか、その可能な年数で到達シナリオを作っていけばよいのでした。これで、毎年の人件費枠の計画は出来上がりです。あとは、毎年その人件費枠の中で、基本給昇給や賞与原資を算定してゆけばよいということです。勿論、付加価値額が毎年計画通り達成されるわけでもなく、また、付加価値構造の内部で計画の未達が起こることもあります。こういう場合にどのように対応しておくかと言うことは、前もって労使で合意しておくことです。それによって、労使が毎年交渉する必要はなくなります。そうすれば、その分のエネルギーと時間をビジネスの成功に費やすことができるようになるでしょう。

この、会社と社員が一体となって頑張る仕組みが、「経営戦略と直結し、かつ社員一人ひとりが生き生きと気持ちよく働くことのできる制度」に必要な、総人件費管理の仕組みでした。

ここでご紹介した付加価値分析は、総人件費管理だけでなく、適正人員を算定することも可能ですし、またそれに基づいて全社の人員計画を策定することや、さらには付加価値経営計画の策定にも利用することができます。

労使で合意して、力を合わせてあるべき付加価値構造の達成に邁進しませんか?そして、透明な原資管理で、気持ちよく働ける会社になりましょう。

これで今回の連載は終了させていただきます。これまで10回にわたり、辛抱強くお読みくださった読者の方々に、ここで深くお礼を申し上げます。また次回の連載でお会いできることを楽しみにしております。

皆様どうもありがとうございました。

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