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  • 執筆者の写真齋藤 英子

【第1回】昔、今、そして・・・


 

日本の人事制度の変遷を見てみますと、その時代の要請にもとづいて変化してきていることが読み取れます。

1960年代から70年代前半までの経済の高度成長期においては、企業はドンドン大きくなり、仕事もドンドン増えていきました。企業は人材を育成し、生産性を向上することが大きな課題でした。この課題に応えたのが、人の職務遂行能力に基づいた人事制度である職能資格制度でした。

70年代後半から80年代の経済の安定成長期には、それまでドンドン採用していた社員全員に対して、マネジメントポジションを用意することが容易ではなくなってきてしまいました。しかし一方で経済は安定的に成長していますので、職能資格制度を変える必要はなかったのです。そこで、それは維持しつつも、何とかマネジメントにならなくても、マネジメントと同じレベルの給与を出すことのできる制度が必要となりました。それが、仕事上の昇進と人の職能資格の昇格を切り離すことでした。これで仕事で昇進しなくとも、人は昇格してゆくという仕組みにして、社員のモラールとモチベーションを維持していったのでした(修正職能資格制度)。

90年代に入り、バブルが崩壊、長期の不況期に突入してゆきました。企業では、人件費削減が大きな課題となりました。それまでの修正職能資格制度によって、仕事と報酬の乖離がクローズアップされ、ミスマッチなどと呼ばれました。この時代の要請に応えようとしたのが、出した成果に応じた賃金をだすという、いわゆる「成果主義」人事制度でした。

そして現在、日本の人口は増加から減少へと、予想より一足早く転換点を迎えました。経済もまた、今まさに不況からの脱出という転換点を迎えつつあるようです。これまでの不況が一段落し、少なくとも、非常に低いながらも安定的に成長率を確保してゆく兆しが見えています。

それでは、この少子高齢化、安定低成長の時代が要請する、新しい人事制度とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

本連載では、この課題に対しての答えをだすべく、数回にわたって考察してゆきます。次回はまず、今日本に必要とされている人事制度とは、どのような制度なのかを、一言で表してゆきます。そこから、回を追って、具体的な姿を見てゆきたいと思っています。

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