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  • 執筆者の写真齋藤 英子

【第2回】制度のキーワード


 

前回は、1960年代からの経済状況の変化に伴って生じた日本の人事制度の変遷を見てきました。今回は、これからの少子高齢化、安定低成長の時代が要請する、新しい人事制度のキーワードは何かを考察してゆくことにしましょう。

そのキーワードは、少子高齢化、安定低成長というこれからの社会経済状況によって企業が直面するであろう課題から見つけることができるはずです。

まず、安定低成長の経済が企業にもたらす大きな課題の一つは、これまでの縮小均衡から脱却し、成長路線に乗れるような新たな戦略をたて、それを実現してゆくことでしょう。不況から成長局面になるとは言え、かなりの低成長は覚悟しなくてはならない。誰もが勝てるわけではない。しかし、知恵を出せば勝つこと、つまり成長し存続してゆくことは可能な時代になってゆく。つまり、知恵を経営戦略として打ちたて、その達成に向けて全社員のベクトルを合わせ、力を合わせて一丸となって働いてゆくことが必要となるでしょう。そのような状況で、人事制度に求められることは、「経営と直結し、経営戦略の達成を支えてゆく」ことにほかなりません。

次に、少子高齢化が企業に与える最も大きな課題の一つは、人材確保の問題でしょう。教育界ではすでに大学全入時代に備えて、大学自体が魅力あるものになっていかなければならないという現実に直面しつつあります。企業も例外ではありません。すでにIT業界では優秀な技術者の確保が大変難しくなってきています。これからの企業はこれまで以上に、魅力ある会社、選ばれる会社にならなければならないのです。そして、そのような魅力ある会社を支えてゆくことのできる人事制度とは、「社員が生き生きと気持ちよく働くことのできる環境を提供できる制度」でなければなりません。ブランドイメージの良い会社、給与の高い会社、休暇の多い会社、魅力のある会社は人によって様々でしょう。しかし、これからこの会社に入社しようかどうしようかと迷っている人にとって、その会社の社員が不健康で生気なく仕事をしていたら、どんな魅力も打ち消してしまうだけの力を持っているはずです。

こうして大きな課題をみてゆくと、①経営と直結し、経営戦略の達成を支えてゆくことのできること、②社員が生き生きと気持ちよく働くことのできる環境を提供できること、 という2つがこれからの人事制度のキーワードとして浮かび上がってきました。

それでは、この2つのキーワードを兼ね備える人事制度とは、いったいどのようなものなのでしょうか? 次回は、そのような人事制度をより具体的に見てゆくことにしましょう。

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