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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

新型コロナ対策としてのテレワークの効果



 

先月新型コロナ対策のひとつとしてのテレワークの効果に触れたが、5月15日付日経新聞に「忍び寄るオフィス不要論」と題し「新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務の普及で、オフィスの在り方が変わってきた」とする記事が出ていた。「テレワークが機能すると確認したスタートアップなど新興勢力は、事業環境の悪化に備えオフィスを解約し始めた」と不動産業界にとっては衝撃的とも言えるニュースである。まだスタートアップや中小企業での動きが焦点となっているが、大手企業での検討状況を知りたいところである。

筆者が2000年初期に働いていた社員規模1000名程度のIT企業では、既にオフィススペースを全社員に必要なスペースの7割程度に抑えていたが業務運営上支障はなかった。私自身典型的な大手企業出身であったため、自分の机が無い状況に当初心理的抵抗はあった。しかしやるべき仕事の定義が明確であったため、仕事の進め方・やり方に自由度の高さを感じ、このやり方に馴染むのに時間はかからなかった。みのり経営研究所を起業してからも、オフィスはヴァーチャル・オフィスと契約し、社員は在宅勤務を主として、在宅オフィスとして賃借り料を社員に支払うやり方を採用してきた。しかし業務遂行上一切支障は生じていない。かつて商社で働いていた時代に、長時間残業が当たり前の日本勤務より、海外勤務での仕事の進め方の効率の良さを感じていたが、これが実証された気がしている。

但しこれら3つの経験に共通しているのは、やるべき仕事が明確に定義されていて、求められる結果を出すことを基本としていることである。スタートアップや中小企業など仕事の効率化が待ったなしの状況では当たり前なことであるが、前近代的な経営に胡坐をかいている大企業にとっては難しいことなのかもしれない。オフィススペースがステータスシンボルであった時代は、この合理的なやり方に心理的な抵抗を感じるのは良く分かる。しかし環境の大きく変化した今、特にこのコロナ問題を契機として、仕事の進め方を基本的に考え直す良い機会ではないだろうか。しかも日本的なやり方が好都合なのは上司にとってであり、既に触れてきた通り部下にとっては不都合なことが多いのである。

コロナ問題で今のような状態が続くと、経済的な影響から自殺者が増えるとの議論がされていた。しかし警察庁の発表数値を見ると、コロナ問題で緊急事態宣言が出され経済的な影響が出てきていると言われた3月・4月の速報値はここ数年来最も低い水準となっている。これからどのような展開になるかはもうしばらくの観察と本格的な分析を待たなければならないが、従来との環境の大きな違いは、外出自粛要請に伴う在宅勤務、働き方の変化である。毎年3月は自殺者数が増加する月であり、環境変化からのストレスが要因と言われてきたが、そのストレスが軽減されたと考えられないだろうか?テレワークにより会社の同僚・上司との直接の接点が減ることは、コミュニケーション上問題ありとの指摘が多かったが、逆に心理的なストレスが減少し、期待された結果を出すことに専念できる状況を生み出しているとも考えられる。必要な指示が明確に出されていれば、部下にとっては仕事遂行上何の支障もないし、逆に自由度が高まり生産性も上がる。また上司にとってもコミュニケーションの基本としての「言葉化」を実践する良い機会である。ストレスの少ない働きやすい職場は生産性も含めより良い業績を生み出す条件である。新型コロナ対策の一環としてのテレワークであったが、これを機会に新しい仕事の進め方について根本から考え直しては如何であろうか?

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