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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

政府主導の働き方改革への疑問


 

民間企業の働き方改革が、政府主導で行われていることに二重の意味で違和感を覚える。まず民間企業の「長時間労働対策」や「生産性向上対策」は彼ら自身が生き残りをかけて自らやるべきことであり、そのやり方は各企業がそれぞれの企業にあったやり方で進めて行くのが本来の在り方であろう。政府からの指導がなければできないような企業は遅かれ早かれ市場から消えてなくなる運命にある。また政府が働き方改革でやるべきなのは、足元の行政府の官僚の働き方である。官僚の「長時間労働」は良く知られており、そもそも「生産性」の意識があるかどうかさえ疑問である。この問題が解決できれば、民間企業の範となるであろう。

官僚の長時間残業の典型は国会答弁の原稿作りである。作成にかかる時間は限られている。しかし実際の答弁書作りの大半は待ち時間であると言われている。答弁のための質問事項が出てくるのが、夜中になるため、準備作業はそこから始まる。当然徹夜に近い作業となる。もちろん待ち時間にやることもあるのであろう。しかし退庁時刻が午後6時であるとし、準備作業に5時間かかるとしたら、質問事項の締め切りは午後1時である。そこまでに質問事項が出てこなければ、答弁書つくりは翌日となる。こんな簡単な決め事が守られなければ、長時間残業などなくなるわけがないし、生産性の議論以前の問題である。この問題の出発点は、締め切り時間に質問事項を出してこない、大臣・国会議員の意識の問題である。長時間労働是正・生産性改善への対応は、こうした基本的な仕事の進め方の見直しが出発点である。

働き方改革実行計画の前文「働く人の視点に立った働き方改革の意義」はその通りであると思う。「長時間労働を是正すれば、ワークライフバランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結び付く」「働き方改革こそが労働生産性を改善するための最良の手段である」「すなわち働き方改革は社会問題であるとともに経済問題であり、日本経済の潜在成長力の底上げにもつながる」。これほど重要な改革だからこそ、まず自らがその働き方を改革することが必要なのではないだろうか。霞が関のオフィスが終業時刻を過ぎたら照明が消え暗くなるようになれば、民間企業も終業時間退社をせざるを得なくなるであろう。また改革を進めて行く上での問題があれば、その解決方法を自らが考え具体的に示すことができるであろう。率先垂範というのが、働き方改革には実践的・効果的なアプローチだと思う。

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