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雇用延長にとどまらぬ処遇改革


 

本年2月8日の日経新聞一面に「雇用延長の賃金再設計」と言う記事が大々的に報じられた。記事は最後に「再雇用者の賃金見直しは・・・・雇用体系全般の再設計につながる可能性がある」と結ばれている。これは昨年12月26日の同紙の社説「企業は雇用延長にとどまらぬ処遇改革を」と同じ方向で書かれている。社説では「役割や貢献度などに応じた方式を強め、グローバル競争に勝てる人事・処遇制度に改めること」「若年からシニアまでの処遇制度全体を見直す時だ」と結論づけられており、大いに賛成したい。しかし結論に行きつく過程でいくつか疑問点があるので、それをここでは指摘したい。

「60歳以降の雇用の義務化は同じ企業に人が漫然ととどまり続ける恐れがあり」とある。人は本当に漫然と企業にとどまっているのであろうか? 続けて「成長分野に労働力が移りにくくなる」と、あたかも雇用の義務化が、成長分野への労働力移動と直結しているように書かれている。また「企業の人件費が増え、若者の採用が抑えられる心配もある」そして結論として、雇用の義務化の「見直しを求めたい」と結んでいる。

まず成長分野への労働力移動が大きな論点になっているが、ここでの議論は60歳以降の労働力に絞られているため、高齢者の成長分野への移動が必要だと論じているのであろうか?もしそうであるなら、雇用延長をするより60歳以上の人材を、特定された成長分野で引き取ることを勧めた方が、筋が通っていると思われる。60歳以上の人は必死になって働き場所を探しており、結果として同じ会社に残ることを選択するケースが多い。もし成長分野にいる企業が、彼らを引き取ってくれるなら、喜んで移動するであろう。

次に人件費が増えること、その結果として若者の採用が抑えられることを心配されている。ここには人事制度をめぐる根深い問題が潜んでいる。人件費が増える構造は、雇用延長とは全く無関係な、古色蒼然とした人事制度がその原因である。この社説の結論はまさに、それを変えるべしと言っていると理解している。また採用に関しても、その人事制度の延長線上に新卒一括採用の慣行が「漫然と」行われている。これに対しても制度改革の一環として見直しを求めるというのが、一貫した主張であると思われる。年齢による社員の分類を前提としている制度を変えない限り、グローバルに活動する企業とは言えない。年齢による雇用延長などではなく、年齢による差別などなくすべきだというのが主張の本筋であると理解した上で、冒頭に挙げた結論に賛成し、日本企業の真のグローバル化を望みたい。

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