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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

【第6回】組織構造設計


 

個々の役割がここまで述べてきたような明確な記述を求められるとしたら、組織構造の設計はどのようなものになるでしょうか?みのりが提唱している組織構造設計のプロセスはマクロデザイン(概念設計)とミクロデザイン(詳細設計)の二つから構成されます。マクロデザインは経営戦略に基づく組織の基本構造を決めるプロセスです。ミクロデザインはその基本構造に基づいたそれぞれの役割の「貢献責任」を記述すること、そしてその貢献責任に基づいた役割の重要度を測定し、必要に応じて人員計画にまで踏み込むところまでの設計です。この二つが行われて初めて組織構造設計が完了することになるのですが、一般的にはみのりで言うところのマクロデザインで終わるケースが多いようです。従って組織の基本構造を現実的に稼働させるために、追加的な調整のメカニズムを改めて導入せざるを得なくなります。人事制度の基盤として組織構造が使い物にならない原因はここにあるかも知れません。

具体的にどのような作業をやるのか、簡単に見てみます。マクロデザインでは組織の一般的な類型から、当社の戦略実現のために最適な組織基本構造を選択します。デザイン・プロセスとしては下記となります:

1)経営戦略(経営理念、中長期の事業計画、次年度事業計画含め)から組織設計の基準となる要素を抽出します。 2)次に選択可能な組織構造の候補を作成します。 3)そして組織設計基準となる要素と可能な組織構造候補との比較検討を行い、要素別の重要度を点数化して、基本構造を選択します。企業規模によっては組織構造の第二レイヤーまでの選択を行います。

以上で基本構造が決まります。このプロセスは一般的なものですが、みのりの場合、2)の選択肢作成の時に「経営機能リスト」を作成するのが特徴です。これは貢献責任を特定する際に使われる視点あるいは「経営領域」を出発点として、当社に必要な機能とはいかなるものか、原点に立ち返って議論する材料となるものです。既に触れたように、「営業」、「生産」、「開発」と言った一般的な名称で呼ばれる機能が、当社では具体的に何を意味するのか?経営戦略の視点から具体的にどのようなサブ機能を持つべきなのか、現場の実際にやっている仕事、市場・顧客からの期待、経営理念等を考慮して一つ一つ特定していくプロセスです。みのりでは既に数十社での経験を通して、考えられる機能・サブ機能のリストを用意しており、かなり刺激的な議論を展開することが可能です。

第三回目に触れた営業の議論などは典型的な例です。「営業」が売り上げ責任を負うという一般的な考え方で、当社の製品・サービスは本当に顧客の満足を得られるのだろうか?「開発」あるいは「生産」は直接顧客のユーザー部門と接点は不要なのか?現場で起こっていることは、経営企画部門や管理部門が頭で考えている以上の速さで変化しており、従来の一般的な概念ではとらえきれない、創造的な仕事のやり方をしていることに思いをはせることが必要です。時には大胆な組み換えが求められます。出来上がりの組織構造そのものは大きな意味を持ちません。それぞれの機能として特定された中身に意味があります。

みのりのパートナーであるテキサス大学ビジネススクールのナヤ教授によれば、組織とはOrganizationではなく、Organizingだそうです。組織とは静的に出来上がった構造そのものに意味があるのではなく、組織の目的・使命を達成するための動的なプロセスを指すと主張されています。構造で示されたそれぞれの機能が、何を達成するために存在するのか?それを明示すること、そして組織がその達成を目指して効果的に動いていくことこそが組織設計の目的とするところです。みのりのアプローチはナヤ教授の指摘に沿ったものとなっています。しかし現実には様々な組織を見てきて、そのような経営者の理念に基づく、それぞれの機能が明示的に示されている組織が少ないのに驚かされます。

次回は上記プロセスで決定された構造に基づくミクロデザインの内容を説明いたします。

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