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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

【第7回】 役割、経営戦略と人事制度のかすがい(2)


 

役割、経営戦略と人事制度のかすがい(2)


(2)貢献責任

役割とはその存在理由を示した「目的」、その目的のために生み出すべき「成果」、そしてその成果を生み出すための日々の「業務活動」が定義された仕事を指します。すでに何度も触れているように、成果の定義が特に重要です。私たちは一般的な呼称との誤解を避けるためにこれを「貢献責任」と呼んでいます。

「貢献責任」の定義には明確なルールを設けています。非常に単純ですが、組織設計を人事制度に繋げていく上では重要なルールです。それはどのような目的を持った役割でも、またどのような業務活動を行なっている役割でも(1)5つから9つの「貢献責任」に纏め上げる、そして(2)一つ一つの「貢献責任」は「・・・を・・・する」と表現すると言うものです。

前回お話したように、組織のあらゆる階層で業務活動レベルでは膨大な仕事が行なわれています。かつて職務記述書を作成した経験なる方であれば、それを全て書き表すことの大変さは身にしみて感じておられる事と思います。昔は仕事の定義は業務活動レベルで捉えられるべきだと考えられていました。またそのような職務記述書が良いものとされてきた時期があったのです。

しかし現実的な組織運営、人事制度の設計・運営を考えると、そのような職務記述書の作成・維持には、時間的にもコスト的にも膨大な作業がかかり、日本では職務記述書そのものが使われなくなってしまいました。これはある意味では自然な流れなのですが、本来の組織運営、人事制度の設計・運用を考えるとそれに代わるものが必要だったのです。しかし残念ながらそのようなものは開発されませんでした。

ここでご紹介している役割定義書はそれぞれの役割の中枢概念である貢献責任が5-9つにまとめられた極めて簡単かつ明快なものです。この定義書作成に当たっては実際の業務に携わっておられる方を出発点として考えるボトムアップ型のアプローチと、会社の経営方針をよりどころとして作成するトップダウン型のアプローチと二通りあります。いずれにせよ、出来上がりの姿は、それぞれの役割に配属される方が成果として「何をどうする」と言う明確な貢献責任を、配属された瞬間から認識できるようになることです。

たった5つから9つの貢献責任では重要な仕事の成果は規定できないと主張される方がおられますが、既に多くの現実の組織での経験からそのような事はないと言えます。特に近年はBalanced Scorecardの考え方が浸透しており、財務業績だけでなく、顧客との関係、社内のプロセス、育成と言った視点からそれぞれの役割を分析する事が可能になっているため、役割定義がより総合的になってきています。

組織設計・組織運営の視点からもこの利点は明確です。例えば上司・部下の関係あるいは並列関係にある役割同士が、このルールに基づきそれぞれが果たすべき貢献責任の表現を明確化することで、それぞれの役割の固有の付加価値を明確に認識し合える事、結果としてそれを生み出す方向に動機付けることが可能となるからです。

具体的なプロセスは、作業時間とか作業量的には僅かですが、頭を使うプロセスと言えます。今やっている業務活動が果たして「何のためにやっているのか」を問い続けるプロセスです。漠然と昔からその仕事をやってきたからというのでは、その仕事を正当化するだけの「貢献責任」とは言えません。例えば前回出した例として会議に出る事が業務活動であるとすれば、その会議は「何のために出ているのか」問い続け無ければ、役割の定義は出来ないのです。

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