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【第1回】北米での経験を踏まえ、日本の経営者に気付いて欲しいこと 


 

みのり経営研究所は、北米におけるこの分野の第一人者であるバーバラ・アニス・アソシエイツ(BAA)のパートナーとして、この3年間日本におけるダイバーシティー・マネジメントの研修に取り組んでいます。BAAはすでに20年間に渡りIBM を始めとするFortune500社の主な企業に対し2,000回以上の研修を実施してきており、研修の内容には定評があります。同社の代表であるバーバラ・アニスは北米にとどまらず、世界各地からの要請に基づき、今では世界30カ国にわれわれのようなパートナーによる現地企業への研修を提供しています。この連載では、BAAとしてどのような考え方でダイバーシティー・マネジメントの研修を実施しているか、私どもが直接経験した内容に基づき、特に企業経営者にとってどのような意味を持つのかといった視点から紹介していきたいと思います。

最近話題として取り上げられることの多いテーマですが、一言でダイバーシティーと言ってもまさに様々な内容が含まれています。性別、民族、人種、国籍、年齢、宗教、文化、言語、ライフスタイル、経歴、等々。最終的には一人ひとりが違うという点にまで行き着きます。これらを漠然とダイバーシティーというテーマでひと括りにして対応しようとすると何をやっているかわからない状態になります。危険なのは、「人はそれぞれ違うのだから、いまさら性別や人種などの議論をする意味はない。皆同じに扱えばいい。」という結論に行き着き、それぞれの違いの持つ意味を無視するような環境を作ってしまうことです。

逆にある問題に特化して展開していくと、極端な議論に引きずられてしまいます。たとえば人種問題を中心にした展開など。欧州におけるサッカーのクラブチームを対象とした調査で、「人種に拘らず選手を集めているクラブは白人だけでチーム編成しているクラブに比べて優れたパフォーマンスを示している」という結果が出ているそうです。このような調査結果に基づき、異なる人種を大幅に入れれば強くなるというような議論。女性問題についても同様です。女性さえ採用・登用すれば企業が強くなるというような主張です。しかしこれらは議論が逆転しています。女性あるいは外国人など多様な構成員が増えるから、企業あるいはチームが強くなるのではなく、多様な人材を活用する力が経営者にあるから、結果として多様な人材が集まり、その力が活かされ、強くなるのです。

多くの経営者がダイバーシティーを意識した経営を心掛けていると発言しています。そして多くの企業がダイバーシティーを担当する組織を新たに発足し、様々な施策を打ち始めています。しかし経営者自身が、多様性を活かすための経営を身に着けようとしている、あるいは身に着けたという話はあまり聞きません。従来どおりの価値観で、部下にだけはダイバーシティーを推進せよと命じているだけのケースが多いのです。

経営者自身がどうやったら、自分の組織の多様性を活かすことができるのか? BAAの研修プログラムの成果に基づき、この連載で少しでも本来のダイバーシティー・マネジメントの持つ意味をお伝えしていきたいと考えています

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