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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

【第6回】 誤解の構造-意図と行動


 

管理職の悩みは尽きない。「部下をどう扱っていいか分からない、特に若い社員、女性社員、中途入社社員、外国人になったらもう皆目見当もつかない」、「何かを説明するときに、どう説明していいか迷ってしまう」、「厳しく叱れない」、「部下同士の関係に気を使ってしまう」等など。部下に気持ちよく働いて欲しい、力を発揮して貰いたいという気持ちが強ければ強いほど、このような迷いが大きい。

この悩みに対する部下側の反応はどうだろうか?その意図を受け止めて、管理職の求める方向で力を出してくれているのだろうか?多くの場合結果は逆であることが多い。「はっきりものを言ってくれない」、「厳しい指摘が無く、真剣に育ててくれているとは思えない」、「仕事の任され方が人によって違う」、「軽視されていると感じる」等など。明らかに管理職の意図が伝わっていない。

人の行動は『意図』に基づいて行われるが、実際に現れる『行動』はその人の経験・価値観を反映している。受け手が正しくその意図を理解するためには、その『行動』と『意図』がどう結びつくかを理解している必要がある。ところがこのつながりに人による違いが現れる。「厳しく叱らない」のは優しく対応することが、女性社員・若手社員のやる気に繋がると信じているからだ。しかし問題点を明確に指摘して欲しいと思う社員もいるし、叱られることにより発奮してやる気を出す社員もいる。そのような社員にとってみると、この管理職は自分を育てようという意識がないのではないかと思えてしまう。『意図』が伝わらない典型的な例である。

例えば管理職レベルの男女間で、それぞれが感じている一緒に働くときの問題点・困難を議論し、結果を発表して貰うことがある。多くの会社で大変興味深い結果に出会う。女性は「男性がそんなに気を使っていてくれていたのか」と驚き、男性は「女性はそんなことを期待していたのか」と気がつく。これは年齢の違い、国籍の違う社員の場合でも同じである。皆自分と同じと思い、この意図を表す行動はこれだと思って行動している。しかし行動の取り方は男女、年齢、国籍だけでなく育った環境によっても大きく異なる。こんな行動をとるのはこう思っているからに違いないと思って、その人間を判断してしまうと大きな誤解が生じる。人はそれぞれ違うということを、特に行動のレベルでの違いを理解している必要がある。「自分であればこうするのに、あの人がそうした行動をとらないのは、こう思っているからに違いない」と思い込む。その思い込みが間違っていると言うことに気付かない内はこの繰り返しで、たまたまそれが女性であれば、だから女性は駄目だと結論付けてしまう。

既に述べたように、本当はどう思っているのかを直接表現してもらうと、「なんだそういうことを期待していたのか」、「そんなことを考えていたのか」と簡単に理解できてしまう。ところがこの一歩がなかなか超えられない。それだけ思い込みが強いと言うこと。実はこの一歩を超えられないために、現実の職場ではもっと深刻なことが起こりつつある。次回それについて触れてみたい。

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