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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

【第7回】疎外感を生み出す行動  


 

管理職の方々が部下に接するときの接し方にはいくつかパターンがある。前回触れたように、彼らが意図的に部下のやる気を殺ぐための行動をとるとは考えられない。逆に善意に基づいて行動しているのだ。しかしその意図が誤解され、お互いの溝が深まっている。そして結果として部下のやる気を殺ぎ、疎外感を感じさせてしまっている。

部下が若い男性社員であれば、通りがけに肩でも叩きながら「最近どうだ?元気にやっているか?」と声をかける。隣に彼と近い世代の女性がいる、あるいは中途入社の社員、年上の社員がいる。同じような行動をとるだろうか?多くの場合気を使って、何もせずに通り過ぎる。「女性の肩は叩けない。セクハラと間違えられる」「一人の時間を邪魔したくない」「プライベートな話を聞いているように取られ、困らせたくない」などと考えながら。一度こんな状態になるとこれが定常化する。あっという間に数ヶ月がたってしまう。そうするともう改めて声をかけることはしなくなる。

会議の席上で、部下に発言を求める。大体管理職の方の理解できる範囲の発言が多い、時々反対意見が出ても理解できる範囲だ。そんな中でいつも少しずれた発言(だと管理職には思える発言)をする社員がいる。多くの場合女性であったり、中途入社の社員であったり、年齢の離れた社員などだ。そんなときにどうするだろうか?じっくりと意見を聞き、理解できないところを詳らかにし、自分の意見を再度説明、理解の徹底を図るだろうか?多くの場合その意見をやり過ごし、表面上は「いい意見」と評価しながら、当初より考えていた方向に議論を進め、結論を出してしまう。短時間で会議を効率よく進めるためには、これが正しいやり方だと思える。今までずっとこれでやって来たし、これからもこのままだ。部下には早くこのやり方になじんで欲しいと思う。

この二つの例の共通点は、表面的にその社員を非難したり、傷つけたりはしていない。真意はあくまでも上司としての気遣いであり、早く仲間になって欲しいと言う願いである。しかしその当事者として部下はどう感じているだろうか?こんな状態が何ヶ月も、場合によっては何年も続けば、その間にその社員は無視され続けたと感じ、あるいは自分の意見は聞いて貰えないものと諦めざるを得なくなっている。丁度「水のしずく」が長い年月を掛け硬い岩も変形させるように、彼らのやる気は殺がれてしまう。そんな状態で、その社員に長期的キャリアをどう考えるかと聞けば、「もうどうでもいいです」と言う答えが返って来る。その場面だけを見て、その社員を『やる気のない社員』と言えるだろうか?

このような典型的な行動パターンがいくつかある。企業によって現れ方は異なるが、どの会社にも特的なパターンがある。このような行動は外部から気をつかせない限り、管理職本人達が自主的に気づくことはない。なぜなら本人たちはそれがあるべき姿と信じて行動しているのだから。しかしその結果は本来なら会社にとっての大事な戦力になるべき社員を、やる気のない社員へと追い込んでいるのだ。『やる気のない社員』が、管理職の善意に基づく何気ない行動から生まれていると言う悲劇である。

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