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  • 執筆者の写真秋山 健一郎

コロナ禍における働き方の変化と企業経営―2021年振り返りと2022年への展望―



 

2021年も様々な出来事があったが、振り返ってみるとやはり新型コロナ問題の社会経済活動への影響が大きかったと言える。新型コロナ対応も2年目に入り一昨年のような混乱状態から、長期的視点からの冷静な対応が浸透しつつあるように思える。

在宅勤務にみられる日本企業における社員の働き方への影響は、長期的に企業経営の在り方に想像以上の大きなインパクトを与えつつあると考えられる。コロナ問題が起こる前の「働き方改革」への及び腰の対応から、企業自身が在宅勤務を前提とした新しい働き方を模索し始めたことは画期的と言える。この流れが加速すれば、従来から指摘されてきた日本企業の生産性の問題は結果的に解消されると期待される。生産性の問題は詰まるところ働き方の問題である。

2021年12月6日付け日本経済新聞に「移民なき時代へ人材争奪」という衝撃的な記事が出ている。記事の論点は「移民」に焦点を当てているが、それとは別にそこに示されているデータは大変興味深い。「各地域の全人口に占める15-29歳の割合」が示されており、全世界で若者世代の割合が減少していくのが見て取れる。日本では少子高齢化が叫ばれていて、若者の減少が日本特有の現象のように言われることが多いが、このグラフではそれが世界的な傾向であることが分かる。欧州は既に20%を切って15%台に近づきつつある。2020年のデータで日本が15.4%であることを考えると、人口構成そのものが日本特有の問題ではないことが分かる。そんな中で移民争奪戦が始まりつつあるというのが記事の論調であるが、さらに興味深いのが国境を越えた「遠隔勤務」の例が挙げられている。今日本で行われ始め得た「リモートワーク」が世界的な規模で進行しつつあるのである。日本で移民の議論はなかなか進展しないが、リモートワークでの海外人財活用が可能となれば人材獲得の切り札になると考えられる。手探りで始めたリモートワークが世界的に展開できるよう動き出せば、日本企業の働き方の改革、そして生産性の改善は大きく前進することが期待できる。

これを実現するには、何回かこのコラムで書いているように、今の仕事のやり方を根本から変える必要がある。メンバーシップ型と呼ばれる仕事の進め方は変えて行かなければ、リモートワークは進められない。みのりでは「役割に基づく人事制度」を標榜してコンサルティング・研修を行ってきたが、2021年は特にその中で「役割定義の手法」に的を絞った研修を4月から7月にかけて連続して実施した。参加者からの反応は昨年までのものとは大幅に変わって来ている。従来はどんなものか知識として知ろうとする参加者が多かったが、昨年は毎回極めて積極的な反応・質問をする参加者が多かった。かなりの数の企業が在宅勤務・リモートワークを導入していて、その進め方の実務的・実践的な問題点を解決したいという意図が感じられた。

リモートワークをきっかけとして職務・役割に基づく働き方が確実に浸透し始めている。当然のことながら、この変化に対応して評価・処遇をどう改革していけばよいかが次の課題となる。現場はすでにその方向に動き出している。今いる人たちの働き方そしてその評価・処遇のやり方がそれに合わせて変化していけば、海外人材のリモートでの活用は目と鼻の先である。合理的な仕事の進め方が当然のこととして受け入れられる風土こそが、日本企業の生産性向上をけん引するカギとなる。

以上を踏まえて、今年のみのりセミナーは、「変化した働き方に対応した評価・処遇の方法について」をテーマとして開催したと考えていますので、乞うご期待。

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