戦略的人事の考え方を知る
- 秋山 健一郎

- 2 日前
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8月14日付け日経新聞「経済教室」の「人事の真の価値を問い直せ」は読み甲斐があった。「戦略と連動した人事」とは最近よく言われているが、その議論は人事の本質を軽視した隔靴掻痒の感あり苛立つことが多かったが、本記事は人事の本質に迫った読み応えのある記事であった。「人事は経営戦略、組織、メンバーのキャリアが影響を与え合う共進化を実現しなければならない」という視点から「戦略的人事」を論じている。
まず「経営戦略とは人々の創造や学習を促し、その成果を事業として結晶化し、果実を得るプロセスである」として経営戦略の根幹に人を置いている。そして戦略実践の担い手として「社内企業家(イントレプレナー)」を想定し、従来の労働者型行動から企業家型への行動の転換を促す人事施策とは何かという視点から切り込んで行く。
行動変革のカギは「事業上の役割・貢献に基づいて職務を定義し、事業目的への理解や共感に根差した経験学習を促すものだ」という結論は、まさに弊社が創業以来訴え続けてきたことを的確に表現している。
「失敗の最小化を狙った緻密な職務設計や意思疎通、KPI(成果指標)などの監査ツールの多用、個人的・短期的な業績と連動した報酬。こうした管理は労働集約的なオペレーションに適合的であったが、メンバーの自律性や学習には悪影響を与える」との指摘は当を得ている。「人事が失敗の最小化を狙った職務設計」という言葉が気になった。一部にはそのような「人事慣行」があったかもしれないが、そこには本来の「職務設計」という考え方は無かったと考える。
「職務を設計する」とはまさに経営が目指す方向に向かって職務を定義することであり、社員の自律性や学習を促すものでなければならない。そこでは「メンバーの働く理由、キャリア、それらにおける個別性・多様性」が考慮されるべきであり、会社の都合を中心とした管理とは全く別物である。
このような人事のあり方は、それに携わる人事の人々の経営戦略・組織の理解だけでなく社員のキャリアへの理解が求められる。その理解を通じた人事の実践を通じて社員の人事への信頼が醸成され、結果として「戦略の実践、即ち役割や貢献を果たすことを通じて経営戦略や組織の進化を促す」のである。当然人事だけではこのような大事業を成し遂げることは不可能で関係者の協力を得ることが必須である。経営者と現場のリーダー・担当者の人事への関与が求められるし、逆に人事も現場の理解を深める必要がある。現場の仕事は現場が考えれば良いというものではなく、経営戦略・組織を理解し、社員のことを理解している人事が戦略実践を担う社員の職務を設計するという発想が必要なのである。人事部門の専門性とは、人事特有の知識だけを持っているだけでは不十分である。会社全体の実態を理解し、社員が社内企業家として行動できる環境を整えることを通じて実現可能となるのである。
その原点が職務設計であるというのが、弊社の主張するところである。
最後の締めくくりの言葉が気に入っています。「探索的で柔軟な戦略実践、メンバーの役割・貢献の定義、彼らのキャリア開発を同じものとして捉えることが、戦略的人事そのものと言える」
