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職務設計から考える人事制度-優秀な社員が活躍できない理由は何か?-

11 時間前
読了時間: 4分



前回のコラム「戦略的人事の考え方を知る」にて、「人事による職務設計への関与」が、経営戦略に基づいた組織が効果的に機能するためには重要であることに触れました。組織が機能的に運営されるためには社員一人一人が自分に求められる役割・責任が明示されることが前提条件であり、さらにその職務を期待通りに果たしたときに得られる処遇条件が明示的に説明され、理解されていることが重要である。職務設計を出発点とする人事制度全体の整合性を司るのが人事なのである。人事の立場からすれば、評価基準・処遇条件が経営戦略に基づく職務設計を軸とするものであることを胸を張って社員に伝えることが出来ることが大切なのである。ブラックボックスの中で決まる人事評価あるいは処遇とは対極にあると言える。


既に書いた記事の中でも触れたことであるが、従来の典型的な日本企業における人事評価制度は、「能力評価基準」となっている。かつてはその能力定義が極めて総花的で上司の主観によるところが大きく、批判にさらされたために近年「コンピテンシー」という概念が欧米から導入され、行動基準という言い方がされるようになってきた。しかし、このコンピテンシー概念を実践的に使えるように展開したのはアメリカのLyle Spencer教授であるが、筆者は同氏と一緒にあるプロジェクトで働いたことがある。彼の主張は「能力というものが独立してある訳ではない。能力とは求められる職務という基準があって初めて、それをよりよく達成するための素養・行動が何かを特定できる」「職務内容の定義がないコンピテンシーは無い」と言い切られていた。その経験を踏まえると、現在日本で普及しているコンピテンシーたるものは、かつての能力評価基準がコンピテンシーという名前に置き換わっただけであることが良く分かる。


領域を限定しなければ人間の能力は無限であるとさえ言える。それを敢えて評価するとすれば、組織の役割・責任を示し、それに基づいて特定の期間どの程度の達成度が示されたかということで疑似的に判断することは可能となる。しかしそれでさえ様々な環境要因があり、その社員の能力が有るか無いかという議論の材料とはなりにくい。本来のコンピテンシーの概念によれば、これらの行動特性が見られれば、その社員は求められる職務に対し高い確率で大きな成果を生み出すことは可能と判断できると言えるだけなのである。


このような視点を人事制度にどう組み込むかは、経営戦略でどの程度のスパンで会社の組織・職務・業績を考え、それを担う社員の開発・育成を考えるかによる。かつて日本企業は10年―20年単位で(松下幸之助は100年単位と言っていた)会社の方向性を考えていた。そのために社員を長期間かけて会社の思想・哲学をたたき込み、将来の会社の存続のために育成してきたのである。

現在ある日本的人事慣行と言われるものは、その名残と言える。会社が短期的な利益/成長を目指す風潮の中で、現在の人事制度が従来の雇用慣行と齟齬をきたしているのは良く理解できる。しかし既に失われた30年という期間がさらに伸びようとしている時に、日本企業としてどの方向に進もうとしているのか選択を迫られていると言える。


ほとんどの日本企業の経営者は高度経済成長の恩恵に浴して現在の地位にある。頭の中は年功序列・終身雇用に慣れ親しんでいる。しかし一方で短期利益・短期的成長のプレッシャーにあえいでいる。その中であるべき方向性を判断するには、経営戦略を単なる短期的な数字を基に策定するのか、あるいは社員をどのような存在として位置付けるのか?経営数値に強い経営企画的な発想だけでなく、一人一人の社員の動機づけを日ごろからどうするか考えている人事を交え、経営戦略・組織を実のある職務設計から人事制度を総括的に考える人事専門家と議論することが求められていると言える。


神戸大学江夏教授のご指摘の通り「経営戦略とは人々の創造や学習を促し、その成果を事業として結晶化し、果実を得るプロセスである」「行動変革のカギは事業上の役割・貢献に基づいて職務を定義し、事業目的への理解や共感に根差した経験学習を促すものだ」という結論は、まさに弊社が創業以来訴え続けてきたことを的確に表現している。


9、10月に引き続き、11月に再度職務設計を出発点とする人事制度の根幹に関するセミナーを開催する予定である。ご興味おありの方は是非参加を検討して頂きたい。

 
 
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