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ホットな話題コーナー

 

職務明確化の方法(4)

2021年06月08日

株式会社 みのり経営研究所
 代表取締役 秋山 健一郎

 

「職務明確化の方法」も第4回目、いよいよ具体的な手法の説明に入る。前回述べたように機能的な組織運営を目的とする組織においては、「職務・役割」とは社員処遇の基準となるものである。短期的なアルバイトに任せる仕事を、箇条書きでタスクの羅列で済ませるようなものとは根本的に異なる。「職務記述書で仕事の内容を書くと、それ以外の仕事をやらなくなる」「職務内容を記述しようとすると膨大な作業が必要で、人事の重要な仕事が出来なくなる」という声を聞くことがある。これは「職務」に対する認識が欠落しているのと、人事の基本的機能を理解していないところから来ている。

 

まず「職務・役割」とは何か?前回お見せした「みのりコンセプト(1)総合的人的資源マネジメント」の中心に位置する「職務・役割」とは、「全社戦略達成のために各社員に期待される貢献の集合である」とみのりでは定義している。カギとなる言葉は「全社戦略」と「貢献」である。大きな組織であれ、小さな組織であれその中の個々の「職務・役割」はその組織が求める「企業理念」を実現するための「全社戦略」に基づいて定義・規定されている。職務・役割の定義が無いあるいは曖昧というのは、戦略がないあるいは曖昧だということである。社員は組織に貢献することを求められているが、その貢献は職務・役割を通して発揮されるものである。これはヒトに基づく社員処遇制度を採用していても同じことである。多くの日本企業で組織あるいは職務・役割を管掌するのが人事以外の部署であるのは、社員の貢献と処遇を切り離しているからであろう。しかし社員の貢献を処遇に反映させようという大きな流れの中で、人事は職務・役割を無視し続けられない状況となっている。「職務内容を記述するのは膨大な作業で、他の重要な仕事ができなくなる」と言って職務・役割の明確化を避けていては、人事の仕事はできないのである。

 

「膨大な作業」となるような職務・役割の明確化を想像してしまうのは、職務・役割の定義とそれに伴う構造を理解していないからである。タスクの羅列程度の認識しかないのであれば、重要な職務・役割を書き表すことは至難の業となろう。しかし職務・役割を「貢献の集合」というとらえ方が出来れば、次はその構造を理解することが必要となる。どのような職務・役割にも組織内における目的が存在する。同時にその目的達成のための様々な日常業務が存在する。一般的にはこの日常業務が仕事と考えられているが、「社員に期待する貢献」という視点に立てば、実は職務・役割にはもう一つの重要な要素が存在する。それは「目的」と「業務活動」をつなぐ、みのりが「貢献責任」と呼ぶ要素である。この「貢献責任」こそが「職務・役割」の定義に基づく実体である。既に本稿の初回で触れたように、職務・役割は3層構造になっている。日常の業務活動には朝出社することから始まり、在宅勤務の場合はパソコンの立ち上げから始まり、メールの送受信、報告書の作成、会議(オンライン会議)への参加、関連資料の収集・分析、計画案の作成、関係先との調整等々数え上げれば数百以上もの業務活動が挙げられる。業務活動という視点に立てば、経営トップから末端の社員に至るまで同じ仕事をしていると言える。従ってこの業務活動が会社の期待する「貢献」の中身ではありえない。もう一歩踏み込んで、それぞれの業務活動が何のために行われていて、その業務活動の結果として何を生み出すことを期待しているのかを明確にして、初めて「貢献する」という視点での職務・役割を明確化したと言える。「職務・役割」の3層構造は下記のような図になる。第1層が目的、第3層が業務活動、その間に第2層として「貢献責任」とみのりが呼ぶ「職務・役割」の肝とも言える最も重要な層がある。

 

 

「貢献責任」を定義するという視点から職務・役割の明確化のプロセスを見ると、決して作業内容を細かく掘り出して羅列するような「膨大な作業」ではない。全社戦略を理解し、それに基づき組織を支えるそれぞれの社員にどのような「貢献」を期待するのかを考えるという、極めて知的なプロセスである。これは組織を機能的に動かしていこうとすれば、必須事項だと言えるが、過去多くの日本企業では軽視されてきたプロセスである。この知的なプロセスを目に見える化・簡潔化して整理したのがみのりの「職務・役割定義の手法」である。次回はこれに基づき「貢献責任」を業務活動からどう抽出するかの手法の説明に入りたいと考えている。

 

なお次回無料セミナーは6月29日火曜日13:30からを予定しており、これが最終回となる。今後の予定としては、職務・役割の明確化の後は、職務に基づく人事制度の基本とも言える「職務・役割の重要度測定」の解説を行いたいと考えている。
皆さんの反応を見て必要あれば、「職務・役割明確化の手法」を改めて企画したいと考えている。

 

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